美賀保丸

美賀保丸（みかほまる）

美賀保丸は、幕末の日本において、江戸幕府が所有した西洋式の帆船であり、その表記には美加保丸や美嘉保丸など複数のバリエーションがあります。この船は、榎本武揚艦隊の一翼を担い、重要な歴史的な役割を果たしました。

概要

美賀保丸の前身は1865年にプロイセンで建造された商船「ブランデンブルク」であり、全長52.2m、幅9.9m、排水量は800トンを誇ります。三本のマストを備えた三檣バーク型の木造帆船で、この船はその年の8月頃、長崎港へ来航中に幕府によって35,000ドルで購入されました。

本船は「美賀保丸」と改名され、幕府海軍の運送船として活躍しました。特に、戊辰戦争の際には榎本武揚が指揮する旧幕府脱走艦隊の一隻として1868年10月5日に品川沖を出港し、614名の将兵と多くの軍需物資を運びました。彼らは旗艦の「開陽丸」に曳航され、蝦夷地を目指しましたが、10月6日には暴風雨に見舞われ、曳航索が切断されてしまいます。この時、マストの二本が折れ、本船は航行不能の状態に陥りました。

沈没

その後、10月11日に銚子の犬吠埼近くの黒生海岸に漂着し、座礁の途中で沈没しました。海に投げ出された乗員らのうち、周辺の漁民に救助されたものの、残念ながら13人が水死しました。生存者の中には250人ほどが利根川を遡り土浦方面へ、また約150人が上総国の山間部を経て江戸へ向かいましたが、新政府軍の高崎藩兵の追撃を受け、大半が投降し、一部は処刑されました。遊撃隊の伊庭八郎らは逃走に成功し、榎本艦隊に再合流しました。

記念碑の建立

1882年には、美賀保丸の水死者13人を弔うために地元の人々によって「美加保丸遭難の碑」が黒生海岸に建立されました。また、静岡市の宝泰寺にも本船の水死者や処刑された人々を弔う墓があります。この船は多くの歴史的出来事に深く関与しており、その証拠として、当時の証人や資料が存在します。

船首像の漂流

興味深いことに、本船の船首像と考えられる女性の木像が後に近くの海岸に漂着しました。この像は両腕が欠損していましたが、宝珠を持つ形で修復され、「龍神像」として銚子市の円福寺に祭られています。しかし、実際にはこの像は同年に沈没した龍野藩船「神龍丸」の船首像である可能性も指摘されています。ちなみに、この像のレプリカは神戸大学海事博物館に展示されています。

美賀保丸の物語は、日本の歴史の一部であり、明治の時代へと続く大きな変革の一端を示しています。

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