義認の教理に関する共同宣言

義認の教理に関する共同宣言

「義認の教理に関する共同宣言」とは、ルーテル世界連盟とカトリック教会の間で1999年10月31日に調印された重要な文書です。この宣言は、信仰によって義とされる教理に対する理解を共有することを目的としており、カトリック教会が福音に対する理解において信仰の重要性を公式に認めたことを示しています。

宣言の中心的な2章では、義認に関する教理がエキュメニカルな視点からどのように扱われるかが論じられています。特に、トリエント公会議において行われた信仰義認を主張する者への断罪が、ルーテル教会に対しては適用されないこと、またルターが信仰義認を否定した場合のカトリック教会に対する断罪が存在しないことが明記されています。こうした内容は、長年にわたって続いてきた両教派間の対立の和解を意図するものであり、信仰に対する共通の理解を模索する試みとして、多くの注目を集めました。

ルーテル教会内でも、この共同宣言に対する見解は様々です。リベラル派の一部は、これを機にカトリック教会が信仰義認の教理を自派に適応したと考えていますが、保守派はその解釈を否定しています。このように、内部の理解や評価は教派によって異なることが、共同宣言の影響の一端を示しています。

カトリック系の南山大学に所属するリチャード・ジップルは、「論争に終止符か」と題した記事でこの宣言の意義を肯定的に評価していますが、日本国内ではその反響はそれほど大きくありませんでした。1999年11月14日付のカトリック新聞がこの出来事を報じたものの、一般のメディアではほとんど取り上げられていない状況でした。しかし、カトリック東京教区のエキュメニズム担当委員である小林敬三神父は、この宣言を「世界エキュメニカル史上画期的出来事」として高く評価しており、その重要性を訴えています。

また、共同宣言の公式な出版を記念して行われた2004年10月30日の合同礼拝は、カトリック教会とルーテル教会が共に礼拝を行うという歴史的なイベントとなりました。この礼拝には550名が出席し、式次第はルーテル教会の儀式に則りながらも、歌はカトリック典礼聖歌が用いられました。このように両教派が協力して礼拝を行ったことは、日本国内においても初の試みであり、宗教間の理解と融和を深めるきっかけとなりました。

さらに、2006年には世界メソジスト協議会がこの共同宣言を自派にも適用することを決議し、宗派間の関係改善が進んでいることを示しました。このように、「義認の教理に関する共同宣言」は、単なる教義の確認を超え、エキュメニカル運動の進展を促す重要な一歩となったのです。

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