信仰義認

信仰義認（Sola fide）：プロテスタント信仰の核心

信仰義認とは、プロテスタント神学における重要な教義であり、「信仰のみ」によって義とされるという考え方です。これは、宗教改革の三大原理の一つとして、「聖書のみ」「万人祭司」と並び称されます。特に、マルティン・ルターによって提唱され、その後のプロテスタント神学の基礎となりました。

ルター派の信仰義認

ルターは、信仰義認を「教会が立つか、倒れるかの条項」とまで表現し、その重要性を強調しました。彼は、当時のカトリック教会の腐敗は、善行によって義とされるという「行為義認」の考え方に起因すると考えました。そして、人は行いではなく、信仰によってのみ義とされると主張しました。この考えは、パウロ書簡を根拠としています。

ルターは、聖書の翻訳の際、『ヤコブの手紙』を「藁の手紙」と呼んだこともありますが、後にこの記述を削除しました。これは、『ヤコブの手紙』が善行の重要性を説いているように読めるため、信仰義認の考え方と矛盾すると考えたためです。しかし、プロテスタントは一様に『ヤコブの手紙』を正典として認めています。

ルターは、エラスムスの自由意志による善行からの救いを批判し、『奴隷意志論』を著しました。その中で、アダムの堕罪後、人は神に向かう自由意志を持たず、善行を行うことができないと説き、カトリック教会の説を否定しました。

改革派の信仰義認

ジャン・カルヴァンは、『キリスト教綱要』の中で信仰義認について詳細に論じています。カルヴァンは、罪人にキリストの義が転嫁され、罪が赦され、神の子として天国に行くことができる、と信仰義認の意義を説明しています。改革派教会では、義認は一度限りであり、義と宣言された者は聖化へと進むと考えられています。また、旧約聖書のアブラハムも信仰によって義と認められたと解釈します。

非プロテスタントの立場

カトリック教会は、トリエント公会議において、プロテスタントの義認の教理を否定し、義認は過程であると主張しました。カトリック教会や正教会からは、ルターの善行と信仰を対立させる解釈に対し、信仰と善行は一体であるという反論がなされています。彼らは、真の信仰は必ず善行を伴うものであり、神の働きかけに人間が応えることが重要だと考えます。

信仰と行いの関係

ルターは、人が真に善行と言えるのは、神の救済を受けたいというレベルを超えた、純粋な愛からなされる行為のみであると考えました。そのような行為は、神の恩寵のうちにのみ可能であり、善行は義認の原因ではなく結果としてのみ可能であると主張しました。つまり、信仰は必ず善行という果実を生み出すと考えたのです。

このように、信仰義認の教義は、教派によって解釈が異なり、議論が絶えません。しかし、信仰と善行の結びつきの重要性は、すべての論者が共有していると言えるでしょう。この複雑で奥深い教義は、現代においても重要な神学的テーマとして議論され続けています。

関連項目

義認論
行為義認
宗教改革
義認の教理に関する共同宣言
奴隷意志論
予定説
プロテスタント正統主義
五つのソラ
他力本願
悪人正機

もう一度検索