耳食録

耳食録（じしょくろく）

『耳食録』は、清代の文言小説集として位置づけられる作品であり、作者は楽鈞（がくきん）です。楽鈞は1766年に生まれ、1814年または1816年に亡くなった江蘇省出身の作家で、初めての名は宮譜、後に鈞へ改名し、字は元淑、号は蓮裳といいます。この作品は、清代の志怪小説における重要な一翼を担っており、特に『聊斎志異』の影響を強く受けています。

概要

『耳食録』は、乾隆57年（1792年）に自序が署名されており、実際には乾隆56年に執筆を終えたとされています。楽鈞が28歳の時に書かれたこの作品は、全12巻112篇から成り立っています。また、続編として『耳食録二編』も存在し、こちらも楽宮譜の署名があり、乾隆59年（1794年）の日付が記されています。『耳食録二編』は8巻86篇で構成されています。

作品の特徴

『耳食録』は、神秘的で幻想的な物語が特徴の作品です。作者は、歴史的な背景や様々な人々の生活を題材にし、何気ない日常の中に潜む異界の存在を描写しています。志怪小説に見られるテーマや形式を採用しており、時には道教や仏教の教えが含まれることもあります。

章節の構成

本作は各篇が独立しているため、読者は好きな順番で物語を楽しむことができます。それぞれの物語には、教訓めいたメッセージが込められており、単なるエンターテインメントとしてだけでなく、倫理や道理を考えさせられる内容も多いです。これにより、作品全体に深い意味を持たせています。

日本語訳書

『耳食録』は日本にも紹介されており、前野直彬によって一部が翻訳されています。彼の訳書『閲微草堂筆記 子不語 述異記 秋燈叢話 諧鐸 耳食録』（平凡社、1971年）には、112編の中から16篇が選ばれ、翻訳されています。この翻訳は、日本語での清代の文言小説を学ぶ上で貴重な資料となっています。

関連項目

『耳食録』に関連する研究や文学ジャンルには、中国文学全般や、志怪小説、伝奇小説などがあります。こうした作品は、六朝から清末にかけての文言小説の流れを受け継ぎ、さらには『聊斎志異』、また別の作品群である『子不語』『閲微草堂筆記』『述異記（東軒主人）』『秋燈叢話』『諧鐸』『螢窓異草』などと相互に影響を与え合っています。

このように、『耳食録』は清代文学の重要な一部としてだけでなく、後世の作品にも多大な影響を与えた作品でもあります。

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