志怪小説

志怪小説の概要

志怪小説（しかいしょうせつ）は、約1700年前の中国の六朝時代に発展した物語の一ジャンルです。この小説形式は、奇怪で不思議な出来事に焦点を当て、その内容は当時の社会や文化を反映しています。志怪小説は、後の唐代の伝奇小説や、さらに後の小説の原型となる重要な役割を果たしました。「志」は「記録」を意味し、「怪」は「異常な事象」を指しており、志怪小説は「不思議なことを記す」作品として位置づけられています。

発生と伝承

中国古代において、歴史書の編纂は重要な作業でしたが、庶民の伝承や奇妙な話は、書物に記載されることはほとんどありませんでした。これらの話は、口伝や話し言葉で広まっていくのが一般的でした。六朝時代に入ると、後漢時代の曹丕による『列異伝』や東晋の干宝による『捜神記』といった著作が登場し、これらは民間の奇談を集めた初期の志怪小説として評価されています。

当時の知識人たちは、「竹林の七賢」などに象徴されるように集まって自由な議論を繰り広げ、哲学的なテーマと共に奇怪な出来事を語りあいました。政治的混乱の中で、宇宙や人生の神秘についての議論が広まり、仏教や道教の影響を受けた物語も多く存在しました。特に、輪廻転生や仙人の話題は、志怪小説によく見られます。これらの作品は、経験や聞いた話を基にしたものであり、比較的短い文体で伝えられることが多かったのですが、唐代に入ると、情景描写や作者の創作性が大きな役割を持つようになりました。

小説史での位置付け

志怪小説に関しての言及は、先哲たちによって行われてきました。『荘子』では些細な議論を「小説」と呼び、後漢の班固は『漢書』の中で、小説を噂や立ち話として分類しました。やがて明代に入ると、胡応麟が様々な小説を六つのカテゴリに分け、その中に志怪を位置づけました。このことから、志怪小説は後の小説ジャンルの発展に寄与し、特に唐・宋時代には大いに発展を遂げました。

志怪小説の特長は、多くの場合物語の中に作者の思想や主張が含まれていない点です。このジャンルは、文語で記され、文言小説として位置づけられますが、その後、白話（口語）での作品が生まれ、『水滸伝』や『金瓶梅』などの通俗小説へとつながっていきます。

代表的な作品

志怪小説には多くの代表的な作品があります。

• - 『列異伝』：曹丕の作とされますが、大部分は断簡となって残っています。
• - 『捜神記』：干宝によって著された重要な作品。
• - 『異苑』：劉敬叔によるもので、東晋の人々への仕官を背景としています。
• - 『聊斎志異』：清代の蒲松齢による作品で、多くの志怪が記されています。

これらの作品は、ただ面白い物語を提供するだけでなく、中国の文化や哲学の一端を知る手がかりともなります。志怪小説は古代から近世まで、流行を続け、さらには日本にも影響を与えました。特に江戸時代には、多くの著作家が志怪小説を翻訳・紹介し、現代までその魅力は色あせることがありません。

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