耶律薛闍

耶律薛闍（やりつ セチェ）

耶律薛闍（1193年 - 1238年）は、金末からモンゴル帝国初期にかけて活躍した契丹人で、東遼を建国した耶律留哥の嫡男です。

生涯

父である耶律留哥がモンゴル帝国に服属した後、薛闍は人質（トルカク）としてモンゴル軍に仕えることになります。1220年に父が亡くなると、母である姚里氏は遠く西アジアにいたチンギス・カンの元へ赴き、夫の地位を継承することを認められました。

1226年、チンギス・カンが西方遠征から帰還すると、姚里氏は息子たちとチンギス・カンに謁見しました。チンギス・カンは彼女の忠誠心を称えましたが、姚里氏が長男である薛闍を帰国させ、父の地位を継がせたいと申し出たのに対し、チンギス・カンは薛闍が既にモンゴル軍で重要な役割を果たしていることを理由に、次男の善哥に地位を継承させることを決定しました。

しかし、姚里氏は薛闍が嫡男であることを主張したため、チンギス・カンはその賢明さに感銘を受け、薛闍の帰国を許可しました。その代わりに、善哥らはモンゴル軍に留め置かれることとなりました。

1227年、チンギス・カンは薛闍を呼び出し、かつて父である留哥がモンゴルに協力したことを স্মরণし、彼を弟のベルグテイと並ぶ地位を与え、3つの千人隊を率いるように命じました。薛闍はこれを受けて遼西地方に戻り、1229年にはオゴデイの金朝親征に従軍して功績を挙げました。

1230年、サリクタイの遼東・高麗遠征に従い、離散した東遼の民を回収して広寧に移り、広寧路都元帥に任命されました。1230年から1237年まで高麗や東夏への出兵に尽力し、6千人隊を率いるまでになりましたが、1238年に46歳で亡くなりました。

耶律薛闍は、激動の時代にモンゴル帝国に仕え、その勢力拡大に貢献しました。彼の生涯は、契丹人としてのアイデンティティとモンゴル帝国への忠誠の間で揺れ動きながらも、最終的にはその能力を認められ、重要な地位を築いた人物として評価できます。

参考文献

池内宏「金末の満洲」『満鮮史研究 中世第一冊』荻原星文館、1943年
蓮見節「『集史』左翼軍の構成と木華黎左翼軍の編制問題」『中央大学アジア史研究』第12号、1988年
松田孝一「モンゴル帝国東部国境の探馬赤軍団」『内陸アジア史研究』第7/8合併号、1992年
『元史』巻149列伝36耶律留哥伝
『新元史』巻134列伝31耶律留哥伝
『蒙兀児史記』巻31列伝13耶律留哥伝

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