聖カタリナの神秘の結婚と聖セバスティアヌス

コレッジョ作『聖カタリナの神秘の結婚と聖セバスティアヌス』

コレッジョが1526年から1527年頃に制作した油彩画『聖カタリナの神秘の結婚と聖セバスティアヌス』は、イタリア・ルネサンス期のパルマ地方で活躍した画家の代表作の一つです。この作品は、モデナの聖セバスティアヌスの信心団体のメンバー、フランチェスコ・グリレンゾーニの依頼によって描かれました。

主題

この絵画に描かれているのは、3世紀の殉教者であるアレクサンドリアの聖カタリナと聖セバスティアヌスです。聖カタリナは『黄金伝説』によると、キプロス島の王族出身で、後にキリスト教に改宗し、幼子キリストと神秘的な結婚をしたとされています。聖セバスティアヌスは、ディオクレティアヌス帝時代に密かにキリスト教徒であったことが発覚し、矢で射ぬかれたものの死に至らず、その後再び信仰を公言したために撲殺されたと伝えられています。

作品の特徴

コレッジョは、聖カタリナが幼いキリストと結婚の約束を交わす瞬間を捉えています。聖カタリナは、自身の象徴である壊れた車輪に手を置き、聖母子の前に跪いています。彼女が差し出した右手に、幼子キリストが金の指輪をはめようとしており、その様子を聖母マリアが慈愛に満ちた表情で見守っています。さらに、聖セバスティアヌスが、その様子をいたずらっぽい笑顔で見守っています。画面の中央には、カタリナ、マリア、キリストの3者の手が集まり、4人の視線が一点に集中しています。聖母子と聖カタリナ、聖セバスティアヌスはそれぞれ対になっており、1518年に描かれた同主題の作品と比較して、より洗練された構成となっています。背景には、聖セバスティアヌスの殉教場面と、聖カタリナの物語の一場面が小さく描かれています。

ジョルジョ・ヴァザーリは、この作品を人物の顔の着色、優雅な外観、色彩の融合、人物の顔への黄金色の照明、目の配置による理想的な自然主義的美しさにおいて優れていると評しています。

来歴

この作品は、ヴァザーリによって称賛された当初から人気が高く、多くの美術商が購入を試みました。1582年にルイージ・デステ枢機卿が購入し、その後、ヴィンチェンチオの娘カテリーナ・ノビリ・スフォルツァに贈られました。16世紀末にはスピキオーネ・ボルゲーゼのコレクションに加わりましたが、彼は売却を拒否しました。その後、アントニオ・バルベリーニ枢機卿に贈られ、ドミニコ・オットネッリによって賞賛されました。バルベリーニがフランスに亡命した後、ジュール・マザラン枢機卿が購入を試み、最終的にマザランの遺産相続人からルイ14世が購入しました。この作品の購入価格は15,000フランで、後にルーヴル美術館の所蔵する4つのコレッジョ作品の一つとなりました。

影響

この作品は、後世の芸術家たちに大きな影響を与え、多くのレプリカが制作されました。ジローラモ・ダ・カルピが模写のためにモデナに赴き、ジュリオ・チェーザレ・プロカッチーニやアンニーバレ・カラッチもこの作品に影響を受けて聖カタリナを描いています。19世紀には、ルイ・ギュスターヴ・リカールやアンリ・ファンタン＝ラトゥールも複製を制作しています。

まとめ

『聖カタリナの神秘の結婚と聖セバスティアヌス』は、コレッジョの卓越した技法と、聖カタリナとキリストの結婚という宗教的なテーマに、聖セバスティアヌスという意外な人物を登場させた独創的な構図が魅力的な作品です。その複雑な来歴と、後世の芸術家たちに与えた影響からも、この作品の重要性が伺えます。

ギャラリー

コレッジョの同主題の絵画

ルーヴル美術館所蔵の他のコレッジョ作品

参考文献

ルチア・フォルナーリ・スキアンキ『コレッジョ イタリア・ルネサンスの巨匠たち28』森田義之訳、東京書籍（1995年）
ジェイムズ・ホール『西洋美術解読事典』高階秀爾監修、河出書房新社（1988年）
Giancarla Periti, Art and Reform: Correggio's" Mystic Marriage of St. Catherine with St. Sebastian"

外部リンク

ルーブル美術館公式サイト, コレッジョ『聖カタリナの神秘の結婚と聖セバスティアヌス』

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