聖セバスティアヌス (ペルジーノ、ルーヴル美術館)

ペルジーノの『聖セバスティアヌス』は、ルネサンス盛期に描かれた宗教画の傑作であり、その芸術性と歴史的背景から多くの人々を魅了しています。この作品は、1495年頃に制作され、現在ではルーヴル美術館の所蔵品となっています。一時的にルーブル美術館ランス別館に展示されたこともあります。

この絵画の主題である聖セバスティアヌスは、ローマ帝国の軍人でありながらキリスト教を信仰した人物で、殉教者として知られています。ルネサンス期には、彼が矢で射抜かれた姿が、当時のヨーロッパで猛威を振るっていたペストの罹患者と重ねられ、ペストから人々を守る聖人として崇拝されました。そのため、この時代には多くの画家が聖セバスティアヌスを題材とした作品を制作しました。

ペルジーノの『聖セバスティアヌス』は、聖人がコントラポストのポーズで立っている姿を描いています。このポーズは、古代ギリシャの彫刻家ポリュクレイトスの『ドリフォロス』に影響を受けたとされています。また、サン・パウロ美術館に所蔵されているペルジーノの複製画にも同じポーズが用いられています。左右対称の構図は、ペルジーノの初期の作品から見られる特徴で、ペルージャ近郊のフレスコ画『聖ロックと聖ペテロの間の聖セバスティアヌス』でも用いられています。聖人は、装飾が施された柱と欄干のある記念碑的なアーチの下のテラスに立っており、その足元にはラテン語の碑文「SAGITTAE. TUAE. INFIXAE. SUNT. MICHI」（「汝の弓は我に突き刺さっている」）が記されています。これは詩篇38篇2節からの引用です。

絵画の背景には、木々が生い茂る丘や山が広がる、ペルジーノ独特の風景描写が施されています。左側には、異教世界の崩壊を象徴する朽ちた穹窿天井と柱が描かれています。これらの要素は、聖セバスティアヌスの信仰が異教の終焉を意味することを示唆しています。

この絵画は、17世紀にはローマのバルベリーニ家のコレクションに所蔵されていたと考えられていますが、後にコレクションが分散し、19世紀にルーヴル美術館が購入しました。ペルジーノの卓越した技術と、聖セバスティアヌスの物語が融合したこの作品は、ルネサンス美術の重要な一例として、今もなお多くの人々に感動を与え続けています。

参考文献
* (イタリア語) Vittoria Garibaldi, Perugino, in Pittori del Rinascimento, Scala, Florence, 2004 ISBN 888117099X

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