聖光寺 (南砺市)

富山県南砺市 聖光寺

富山県南砺市の山間部、楮（こうず）地区にある聖光寺は、真宗大谷派に属する寺院です。かつての五箇山の一部であるこの地において、聖光寺は室町時代に形成された念仏道場を起源とし、地域に根ざした真宗信仰の歴史を今に伝えています。特に、寺が所蔵する「太子像」は、聖徳太子が三歳の時の姿を刻んだものと伝えられ、その由緒から南砺市の文化財に指定されています。

五箇山地方に真宗の教えが本格的に広まったのは、室町時代後半、文明年間（1469年〜1487年）に本願寺第八代宗主蓮如が越前国（現福井県）の吉崎に滞在し、その活動が北陸地方に大きな影響を与えた頃からです。五箇山への真宗伝播は、越前国の和田本覚寺が中心となり、聖光寺の始まりである楮村道場を含む赤尾谷地域の多くの寺院は、当初はこの和田本覚寺の傘下にある道場として始まりました。

聖光寺の開創には、この地の有力者であった篠塚氏が深く関わっています。中世の赤尾谷地域において、楮一帯は平瀬氏の勢力圏であり、その配下には新田義貞の家臣の子孫とされる篠塚氏が住んでいました。聖光寺の寺伝によると、延徳二年（1490年）、篠塚藤之進という人物が和田本覚寺の門徒となり、永正六年（1509年）には本願寺第九代実如から法名を授かりました。このことは、聖光寺所蔵の方便法身像の裏書に永正六年六月六日付で「本覚寺門徒 篠塚□□□ 越中国利波郡赤尾楮村」と記されていることからも確認でき、この頃に楮村に念仏道場が形成されたと考えられています。また、篠塚藤之進の帰依を機に、白山信仰に基づいた天台浄土教を信仰していた人々が真宗へと転宗していったという口碑も残されています。

さらに、天文二十一年（1552年）に作成された「五箇山十日講起請文」には、五箇山の各村の有力者の署名があり、「赤尾谷」の項目に「かうす村左衛門尉」「同 太夫」の名が見られます。これが楮集落名の初見とされ、「かうす村左衛門尉」が楮村道場、すなわち聖光寺の開祖であると推定されています。

道場としての歴史を経て、聖光寺は度重なる災害に見舞われました。天正十三年（1585年）の天正地震では、道場が庄川の洪水で流失しました。その後、本堂は一度再建され、現在の場所へと移転しましたが、明治九年（1876年）に全焼してしまいます。このため、半世紀近くにわたって仮のお堂が用いられましたが、昭和十一年（1936年）に現在の本堂が再建されました。寺院としては、昭和二十二年（1947年）に正式に「聖光寺」の寺号が認可され、昭和三十八年（1963年）には屋根の改修も行われています。

聖光寺が伝承する重要な文化財である「太子像」は、聖徳太子が三歳の時の姿を刻んだ、高さ55.5センチメートルの像です。室町時代の作とされています。この像には、平家の落人であったとされる篠塚康之進が楮の草庵で拝していたという伝承があります。その後、永正年間に道場が建立されると、像も道場に移されました。しかし、天正地震の際に道場とともに庄川に流され、遠く庄金剛寺領の弁財天近くまで漂着したといいます。村人たちは、「村に帰りたい」という太子像のお告げを受けて探しに出向き、見つけ出して楮村へ持ち帰り、再建された道場に安置したと語り継がれています。この故事により、以来代々太子像は深く尊崇されてきました。この太子像は、その由緒と価値から、昭和四十八年（1973年）に旧上平村の文化財に指定され、南砺市となった現在も市の文化財として保護されています。

聖光寺を含む五箇山地方の多くの寺院は、越前国和田本覚寺を源流とする道場から発展しました。戦国時代を経て、本願寺が東西に分派する際、和田本覚寺の流れを汲む道場も東方の小松本覚寺と西方の鳥羽野万法寺に分かれました。聖光寺は真宗大谷派（東本願寺）に属しており、この歴史的な流れの中に位置づけられます。五箇山の歴史とともに歩んできた聖光寺は、地域の人々の信仰と文化を伝える貴重な存在です。

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