聖天使首大聖堂 (モスクワ)

聖天使首大聖堂（アルハンゲリスキー大聖堂）

モスクワ・クレムリンの大聖堂広場に聳え立つ聖天使首大聖堂（アルハンゲリスキー大聖堂）は、ロシア正教会に所属する由緒ある聖堂です。ロシア語ではАрхангельский соборと表記され、聖天使首ミハイル大聖堂とも呼ばれます。この記事では、その名称の由来、歴史、建築様式、内部の装飾、そして埋葬されている人々について詳しく解説します。

名称について

「アルハンゲリスキー」とは、「アルハンゲルの」という意味を持ち、正教会では「天使首」と訳されます。これは、大天使ミハイル（ミカエル）を指す尊称です。ミハイルは、ギリシア語のΜιχαήλ（ミカエル）の中世ギリシャ語読み「ミハイル」がロシア語に転写されたものです。

歴史

聖天使首大聖堂は、1333年に建てられた古い大聖堂の跡地に、1505年から1508年にかけて建設されました。建設の監督は、イタリア人建築家のアレヴィツ・ノーヴィ（アロイジオ）が担当しました。

16世紀から17世紀にかけて制作されたフレスコ画が聖堂内を飾っています。これらのフレスコ画は、カザンのイアコフ、ステファン・リャザン、イオシフ・ヴラディミロフらによって描かれたものや、1652年から1666年の間に描かれたものが含まれています。壁面の石細工には、イタリア・ルネッサンスの影響が色濃く見られます。

高さ13メートルの雷文様の金メッキが施された木製のイコノスタスには、17世紀から19世紀にかけてのイコンが嵌め込まれています。シャンデリアは17世紀のもので、聖堂の荘厳さを一層引き立てています。

かつて、ロシア軍の戦勝は大聖堂で祝われていました。17世紀までは、ロシアのツァーリや大公たちがこの大聖堂に埋葬されており、現在もその墓所を見ることができます。イヴァン1世、ドミトリー・ドンスコイ、イヴァン3世、イヴァン4世（雷帝）、イヴァン5世などがここに眠っています。聖堂内には54の被葬者がおり、1636年から1637年の間に華麗に装飾された46の墓石は、1903年に青銅で光沢がつけられました。イヴァン4世（雷帝）の息子であるウグリチのドミトリーは、17世紀にこの大聖堂に埋葬されました。また、ピョートル2世もここに葬られています。彼は、ピョートル大帝以降のロシアの支配者の中で唯一、モスクワのクレムリンに埋葬された人物です。

1917年のロシア革命時には戦闘によって損害を受け、その後、ボリシェビキによって閉鎖されました。1950年代には、破壊を免れたモスクワ・クレムリン内の他の教会と同様に博物館として保存され、宝物の多くはクレムリンの武器庫博物館（武器宮殿）に移送されたり、海外に売却されたりしました。1992年のソビエト連邦崩壊後、建物はロシア正教会に返還され、不定期に礼拝が再開されています。

その他の被葬者

フョードル1世
セミョーン (モスクワ大公)
* ドミトリー・ヴヌク - イヴァン3世の最年長の孫

聖天使首大聖堂は、ロシアの歴史と文化を今に伝える貴重な遺産であり、訪れる人々に深い感動を与え続けています。

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