聖道門

聖道門の概念とその背景

聖道門（しょうどうもん）は、仏教の中で「浄土門」に対立する概念として位置付けられています。この宗旨は、様々な修行を通じて自身の力で成仏を目指すことを重視しており、法然の教えに基づいて発展してきました。特に、浄土宗においては、法然が提唱した自力の修行が重要視されています。

法然は、浄土五祖である道綽の『安楽集』に記された「聖道」と「往生浄土」の二種の勝法に触れ、『選択本願念仏集』（通称『選択集』）の中でこの言葉を使用し、他の宗派との比較を行いました。聖道門においては、成仏するために自身の努力が不可欠であるとされ、特に密教系の天台宗や真言宗が主流だった当時の仏教において、その思想を明確にする役割を担っていました。

法然は、特に末法の時代において他力本願の優越性を説き、衆生に対して称名念仏の実践を強く勧めました。これは、阿弥陀仏の本願に依存することで、救われる道を示すものでした。『選択集』には、仏教の引用として「大集月蔵経云我末法時中億億衆生起行修道未有一人得者」という一節があります。ここでは、膨大な衆生が道を修めようとしても、一人も救われないという状況を指摘し、聖道門の修行がいかに困難であるかを示しています。

このように、法然は聖道門の主教が極めて難しいものであり、そのために聖道門を捨てて浄土門に入るべきであると論じました。この教義は、興福寺や延暦寺からの批判を受けながらも、現代に至るまでその信奉者を集め、浄土宗に深く根付いています。法然の思想には、他宗からの反発があり、特に日蓮の立正安国論や明恵の摧邪輪などの著作においても、聖道門に対する批判が表現されています。

聖道門と他宗との関係

聖道門は、浄土教とは異なる自力の修行に基づく教義を持つため、浄土宗以外の宗派においてはあまり用いられることがありません。必要とされる修行の難しさからも、信者へのプレッシャーが存在し、これが他宗との対立の根源となっています。法然自身は、称名念仏を通じて他力本願における救済を強調しましたが、聖道門の厳しさゆえに多くの信者が浄土門へと移行することが多かったのです。

このように、聖道門の教えは、仏教の多様性の中で一つの重要な位置を占めており、その思想は法然の時代から現在に至るまで多くの議論を引き起こしてきました。

参考文献

• - 大橋俊雄「選択本願念仏集」『法然全集 第2巻』春秋社、1989年11月、159-352頁。
• - 大橋俊雄「選択本願念仏集」『原典日本仏教の思想 5』岩波書店、1991年、87-162頁。
• - 国訳大蔵経編輯部 編「選擇本願念佛集」『国訳大蔵経 : 昭和新纂 宗典部 第3巻』東方書院、1928年。

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