聶耳

聶耳（じょう じ）- 革命の音楽を奏でた夭折の天才作曲家

聶耳（ニエ・アル、1912年2月14日 - 1935年7月17日）は、中華民国（現在の中華人民共和国）の作曲家です。彼は、中華人民共和国の国歌である『義勇軍進行曲』の作曲者として、その名を知られています。本名は聶守信、字は子義です。

生い立ちと音楽との出会い

1912年、聶耳は雲南省昆明市で生まれました。幼い頃から楽器に親しみ、音楽への関心を深めていきました。師範学校時代には、共産主義思想に触れ、社会変革への意識を高めていきました。卒業後は上海を拠点に、左翼的な映画や演劇の音楽を数多く作曲しました。代表作には、「採掘の歌」や「波止場労働者の歌」などがあります。

政治活動と亡命

学生運動への参加がきっかけとなり、聶耳は雲南軍閥政権から追われる身となりました。1930年、上海へ逃れ、職を転々とする中で、明月歌舞団のバイオリン奏者として音楽活動を再開しました。1933年には中国共産党に入党し、政治活動にも積極的に参加しました。しかし、左翼文化人への弾圧が強まる中、盟友の劇作家・詩人である田漢も逮捕されてしまいます。逮捕を恐れた聶耳は、1935年4月に日本へ亡命します。

『義勇軍進行曲』誕生

日本滞在中、聶耳は抗日映画『風雲児女』の主題歌として、『義勇軍進行曲』を作曲しました。この曲は、田漢が獄中から密かに送った歌詞をもとに作られ、後に中華人民共和国の国歌として採用されることになります。作曲当時、聶耳はヨーロッパやソ連への留学も計画していたとされています。

突然の死

1935年7月17日、聶耳は神奈川県藤沢市の湘南海岸（鵠沼海岸）で遊泳中に行方不明になり、翌日、水死体として発見されました。23歳という若さでの突然の死は、当時から多くの憶測を呼びましたが、地元の関係者による証言から、事故死とする見方が一般的です。彼の遺骨は、1937年に故郷の昆明市に埋葬されました。

聶耳の遺産

聶耳の死後、『義勇軍進行曲』は1949年9月27日、中華人民共和国の暫定国歌として正式に採用されました。この曲は、中国人民の不屈の精神を象徴する音楽として、今もなお広く歌い継がれています。

聶耳を記念する場所

神奈川県藤沢市の湘南海岸公園には、聶耳記念広場があります。ここには、彼の功績を称える記念碑が建てられており、毎年7月17日には、聶耳の命日を悼む碑前祭が開催されています。この碑は、藤沢市民と聶耳記念碑保存会によって大切に守り続けられています。1950年には「聶耳記念の夕べ」が開催され、日本で初めて『義勇軍進行曲』が歌われました。1954年には、耳の字を模した記念碑が建立され、1965年には再建除幕式が行われました。さらに1986年には記念広場が整備され、2010年には中国語で聶耳の生涯を刻んだ石碑が完成しました。

聶耳と藤沢市

聶耳の死没地である藤沢市は、彼の生誕地である昆明市と1981年に友好都市提携を結びました。この提携は、聶耳の生涯を記念するだけでなく、日中友好の象徴としても重要な意味を持っています。

まとめ

聶耳は、短い生涯の中で、音楽を通して社会変革を訴え続けた人物でした。『義勇軍進行曲』は、彼の音楽的才能と革命への情熱を象徴する作品として、今後も世界中で歌い継がれていくでしょう。

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