肝付兼行

肝付兼行：測量から政治、そして教育まで - 多彩な才能を駆使した生涯

肝付兼行（きもつき かねゆき、1853年4月23日 - 1922年1月13日）は、近代日本の発展に多大な貢献をした稀有な人物です。薩摩藩士の家に生まれ、測量技術者として頭角を現した後、海軍の要職を歴任し、更には大阪市長や貴族院議員にも就任するなど、その活動は多岐に渡ります。本稿では、彼の波瀾に満ちた生涯と、各分野における功績を詳細に見ていきましょう。

測量技術者としての卓越した才能

明治維新後、肝付兼行は北海道開拓使において測量技術者として活躍しました。その高い技術と精度は高く評価され、後に海軍水路局（後の海軍水路部）へ転じ、測量課副長、量地課長などを歴任します。特に、現在の港区麻布台にあった海軍観象台における緯度の測定は、後の日本経緯度原点の決定に繋がる重要な業績であり、"肝付点"として現在も知られています。また、国内における経度電信測定を初めて実施するなど、日本の測量技術の向上に大きく貢献しました。 海軍水路部では測量課長、そして第2代と第4代の水路部長を務め、日本の沿岸測量体制の整備に尽力しました。数学者としても知られた柳楢悦との交流もあり、東京数学会社にも参加しています。

海軍軍人としてのキャリアと教育への貢献

測量分野での功績が認められ、肝付兼行は海軍に進み、着実にキャリアを積んでいきます。1904年から1905年にかけては海軍大学校長を兼任し、次世代を担う海軍士官の育成にも尽力しました。1905年には海軍中将に昇進。その後、予備役、後備役を経て、1918年に退役します。

退役後も、彼は教育・啓蒙活動に力を注ぎました。大日本教育会や帝国教育会の役員として、海事思想の普及に努め、全国各地で講演を行いました。また、帝国水難救済会理事として、水難事故の減少に貢献すべく、救難所の新設にも尽力しました。その活動は、国民の安全と教育への深い関心を示すものです。彼の著作には、日本の海洋国家としてのあり方に関する論考が多く含まれ、国民の意識改革に大きく貢献しました。例えば、国民新聞への寄稿「海上の権力」や、帝国水難救済会機関誌『海』への寄稿「我が海国的価値を論じて国民の覚悟に及ぶ」などは、当時の国民に大きな衝撃を与えたとされています。

政治家としての顔と晩年

海軍を退役後、肝付兼行は1907年に男爵に叙せられ、1911年には貴族院議員に勅選されました。貴族院では土曜会に所属し、政治活動にも携わりました。また、1913年には第5代大阪市長に就任しましたが、短期間で辞任しています。晩年は、大日本水産会顧問として、水産業の発展にも貢献しました。青山墓地には、水路会員によって建立された「肝付兼行閣下墓碑」が今も残っています。

まとめ

肝付兼行の生涯は、測量技術、海軍、政治、教育など、多様な分野にまたがる活躍によって彩られています。彼の功績は、近代日本の発展に大きな影響を与えただけでなく、現代社会においても、海洋国家としての日本のあり方や、安全・防災への意識を高める上で重要な示唆を与えてくれるものです。彼の多面的な才能と、国民への貢献を改めて振り返ることで、私たちは彼から多くのことを学ぶことができるでしょう。彼の残した文献は、今もなお研究者の間で高く評価され、新たな知見をもたらし続けています。今後の研究も期待されます。

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