股旅 (映画)

映画『股旅』について

『股旅』は1973年4月7日、市川崑監督によって公開された日本映画で、併映には『パリの空の詩』がありました。この作品は19世紀初頭の日本の田舎を背景にした物語であり、独特の風情が漂う作品です。

製作背景

本作の製作は、当時「一千万円映画」という低予算をキャッチコピーとしていたATGにおいて、市川崑が企画したものでした。ATGは市川の提案を快諾しましたが、資金は市川が追求することになり、総製作費の1200万円のうち半分を自身でプロダクションを作り出すこととなりました。

市川は資金を集めるために、元電通のスタッフであり、東京オリンピックの広報プロデューサーも務めていた小谷正一と共に、笹沢左保の原作を元にしたテレビドラマ『木枯し紋次郎』を企画します。このドラマはフジテレビが唯一承認し、大ヒットを記録します。これにより、市川は自己負担の製作資金600万円を手に入れますが、撮影用フィルムの追加購入が必要になり、急遽、黄桜酒造とのタイアップを図るなどして対応しました。

キャスティングと撮影

キャスティングでは、市川の知人であるテレビディレクターの推薦により小倉一郎が選ばれました。また、妻の和田夏十が尾藤イサオを推薦し、その尾藤から萩原健一が起用されています。萩原は当初、出演料を巡ってトラブルがあったものの、最終的に出演を強く希望し、参加することが決まりました。

撮影は予算の関係で全てロケーションで行われ、長野県の過疎地で24日間にわたって実施されました。スタッフは、撮影用の家屋にあった現代的な電化製品を撤去し、古い農家の雰囲気を残すために障子を使用しました。市川監督は、格安の民宿に宿泊しながら撮影を続けます。音楽面では市川自身が関与し、太鼓の既存音源に大正琴の音を加え、独特の音楽を生み出しました。

市川崑の振り返り

市川監督は後に、「色々と苦労したが、素朴な製作プロセスの中で映画作りの原点に帰ったように感じた」と振り返っています。この映画の制作は、精神的にも肉体的にも充実した時間だったのです。

スタッフとキャスト

• - 監督: 市川崑
• - 脚本: 谷川俊太郎、市川崑
• - 製作: 葛井欣士郎、富沢幸男、大岡弘光
• - キャスト:

- 萩原健一（黙太郎）
- 小倉一郎（源太）
- 尾藤イサオ（信太）
- 井上れい子（お汲）
- 常田富士男（仁義を受ける子分）
- その他、多数の俳優が参加。

受賞歴

本作は1973年度キネマ旬報の日本映画ベストテンで4位に選ばれ、文化庁優秀映画に選出されるなど評価を受けており、さらに第1回カンヌ国際映画祭ポスター・コンクールではグランプリを獲得しました。また、ロンドン映画祭にも出品されています。

『股旅』はその製作過程や深いテーマ性からも今なお語り継がれる名作となっています。

もう一度検索