肥前飯田駅

肥前飯田駅

肥前飯田駅（ひぜんいいだえき）は、佐賀県鹿島市大字飯田に所在する、九州旅客鉄道（JR九州）長崎本線の鉄道駅です。有明海沿いの静かな集落に立地し、現在は駅係員が配置されない無人駅として運営されています。

歴史

当駅は、比較的早い時期である1934年（昭和9年）4月16日に、当時の鉄道省によって開業しました。駅名に「肥前」という旧国名が冠されているのは、同時期に他線区で既に「飯田駅」という駅名が存在していたため、これと区別するために旧国名を冠したと言われています。開業当初は、旅客扱いに加えて貨物や荷物も取り扱っていましたが、社会情勢の変化に伴い、その役割は次第に変化していきました。まず、1962年（昭和37年）2月15日には、駅での貨物取扱が廃止されました。さらに1972年（昭和47年）4月1日には、小荷物や手荷物などの荷物扱いも終了し、これと同時に駅は無人化されました。これにより、駅員による窓口業務などがなくなり、利用者は簡素化された設備を利用することとなりました。国鉄が分割民営化された1987年（昭和62年）4月1日には、他の多くの駅と同様に、当駅も国鉄からJR九州へと移管されました。近年では、2022年（令和4年）9月23日のダイヤ改正により、長崎本線の肥前浜駅から長崎駅までの区間が非電化されたことに伴い、当駅も電化設備を持たない駅となりました。これらの歴史的な変遷を経て、現在の肥前飯田駅に至っています。

駅構造

肥前飯田駅は、線路が地上に敷設された地上駅であり、島式ホームが1面と、それに接する形で2本の線路が配置されています。駅の線路配置は一線スルー方式となっており、特に上り方向（鳥栖方面）の線路は、停車しない列車が通過線として高速で走行できるようになっています。ホームの構造としては、かつて当区間で運用されていた817系電車に対応するため、その2両編成の長さに合わせて一部が嵩上げされています。これは、車両とホームの段差を小さくし、乗降時の安全と利便性を向上させるための措置ですが、これによりホーム有効長が短縮され、長編成の列車は停車できません。駅舎は設けられておらず、駅の入口からホームへは階段を利用して直接アクセスする形態となっています。無人駅であるため、自動券売機や改札機などの設備はありません。

利用状況

当駅の利用状況を示す公的な数値は、近年は限られています。最後に公表されたデータによると、2016年度における1日平均の乗車人員は48人でした。この数値は、当駅が地域の生活に密着した、比較的利用者の少ないローカル線の駅であることを示唆しています。しかしながら、2017年度分以降の乗車人員については、JR九州の公表方針により非公表となっているため、現在の正確な利用状況を把握することはできません。

駅周辺

駅の周辺は、有明海沿岸の集落の風景が広がっています。駅からほど近い場所には飯田漁港があり、この地域の主要な産業の一つが漁業であることが見て取れます。駅の東側、海岸寄りを並行して走るのが国道207号線で、これは佐賀県内から長崎県方面へ向かう主要な道路です。駅の出入口と国道207号線との間は、およそ100メートルほどの短い佐賀県道231号肥前飯田停車場線によって結ばれています。公共交通の面では、駅の東側、国道207号線沿いの飯田川河口付近に祐徳バスの「飯田」バス停があります。このバス停は駅から約200メートルほどの距離に位置し、鹿島バスセンターと竹崎港を結ぶ路線バスが運行されており、鉄道駅との乗り換えも可能です。駅周辺は、住宅と田畑が点在する静かで落ち着いた環境です。

隣の駅

JR九州長崎本線における肥前飯田駅の隣駅は、上り方向（鳥栖方面）が肥前七浦駅、下り方向（諫早・長崎方面）が多良駅となります。

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