鹿野川ダム

鹿野川ダムの概要

鹿野川ダム（かのがわダム）は、愛媛県大洲市に位置し、肱川水系の肱川に建設されたダムです。このダムは、高さ61メートルを誇る重力式コンクリートダムであり、主に洪水調節と発電を目的とした国土交通省直轄の多目的ダムです。ダムによって形成された人造湖の名称は鹿野川湖（かのがわこ）です。

歴史と建設の経緯

愛媛県南部を流れる肱川は、数百の支流を持ち、流域面積は約1,200平方キロメートルに達する地域最大の河川です。しかし、これまで下流の大洲市では、狭い川幅の区間が原因で水害の被害が頻繁に発生していました。そこで1953年10月、当時の建設省は肱川の治水と利水を目指し、「肱川総合開発事業」の一環として鹿野川ダムの建設を決定しました。

ダムは肱川の河口から約35キロメートル上流に位置し、計画洪水流量は大洲地点で4,250立方メートル毎秒、ダム地点で2,750立方メートル毎秒に設定されています。これにより、大洲地点の流量を750立方メートル毎秒減少させることが可能となります。また、愛媛県営の水力発電所も併設されており、最大1万4,000キロワットの電力を生み出し、年間では約5,612万1,000キロワット時の電力量が得られます。

工事の進展

1956年に工事が始まりましたが、地質の問題により基礎掘削が増加することになりました。特に1958年の中間湛水時には、近隣地域で地すべりの問題が発生しました。にもかかわらず、1960年にはダムの管理が建設省から愛媛県へ移管され、全事業も完了しました。

洪水対策と再開発

鹿野川ダムの完成により水害の頻度は減少しましたが、1970年や1982年、1995年の豪雨、さらには2018年の集中豪雨などで、依然として肱川流域は水害に見舞われています。特に2018年の水害では、流入量が過去最大の3,800立方メートル毎秒に達し、大洲市内でも多くの家屋が浸水しました。これを受けて、ダム操作規則が見直されることになりましたが、その改定には賛否がありました。

さらに、上流に野村ダムが建設されたほか、鹿野川ダム自体も機能向上のための再開発が実施されました。新しい放流設備の増設、貯水池配分の見直し、湖底の堆砂除去などが行われています。これに伴い、ダムの管理は愛媛県から再び国土交通省へと移管されました。

自然環境とアクセス

鹿野川湖は、ヘラブナ釣りの名所としても知られ、冬には多くのオシドリが集まる景勝地でもあります。周辺は肱川県立自然公園に指定されており、自然環境が保存されています。訪れる際は、JR予讃線の伊予大洲駅から路線バスを利用するか、自家用車でのアクセスが便利です。

鹿野川ダムは、その治水機能だけでなく、地域の環境保護や観光資源としても重要な役割を果たしています。

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