胡安国

胡安国：北宋末から南宋を繋いだ儒学者

胡安国（1074年-1138年）は、中国北宋末期から南宋初期にかけて活躍した著名な儒学者です。福建省出身で、幼少期から優れた学才を示し、後に太学で学びました。程頤の弟子である朱長文や靳裁之らに師事し、程朱学派の思想を深く吸収しました。

紹聖4年（1097年）に進士に及第すると、太学博士や湖南学事に任命されました。しかし、その後は蔡京らの策略によって一時的に失脚するなど、官界での歩みは決して平坦ではありませんでした。張商英が宰相になると成都学事に転じますが、父の喪に服した後、病を理由に官職を辞し、その後も幾度となく要職への推挙を辞退しています。

靖康元年（1126年）、欽宗は胡安国の学識を高く評価し、中書舎人に任命しました。しかし、耿南仲ら保守派の反対により、右文殿修撰や通州知州へと左遷されます。

南宋建国後は、しばしば朝廷に召され、紹興元年（1131年）には再び中書舎人に任命され、侍講を兼務しました。この時、『時政論』21篇を献上し、王安石による『春秋』の廃止と学官の設置を批判しました。その後、高宗に朱勝非を宰相にしないよう進言したことが原因で官職を辞し、徽猷閣待制や永州知州に任命されましたが、いずれも赴任しませんでした。

高宗の旧臣への配慮により、提挙江州太平観に任命され、『春秋伝』の編纂を命じられます。この『春秋伝』は、完成後に高宗から高く評価され、胡安国の名声を不動のものとしました。その後、提挙万寿観、侍講、宝文閣直学士などを歴任しました。65歳で亡くなると、文定と諡され、田10頃が賜られました。

学問と著作

胡安国は、常に国難を救うことを志し、厳格な立場を貫きました。40年以上に及ぶ官僚生活のうち、実際に在官していたのはわずか6年に満たないと言われています。二程（程顥・程頤）の高弟として、游酢、謝良佐、楊時らと交流し、互いに学問を深めました。その学問は、次男の胡宏と共に「湖湘学派」を形成し、後世に大きな影響を与えました。

主な著作には、『春秋伝』30巻、『通鑑挙要補遺』100巻、『文集』15巻などがあります。『春秋伝』は明代初期の科挙制度制定において重要な参考文献として用いられ、陸粲や袁仁といった後世の学者にも大きな影響を与えました。また、『上蔡先生語録』は謝良佐の言行をまとめたもので、胡安国が記録したものです。『二程文集』13巻・附録2巻も編纂しており、程朱学派の思想伝播にも貢献しました。

胡安国は、理想と現実の狭間で葛藤しながらも、一貫して儒学の道を歩み続けました。彼の学問と著作は、後世の儒学の発展に多大な貢献を果たし、今日までその名を残しています。その生涯は、理想を追求する者の苦悩と、揺るぎない信念を示す好例と言えるでしょう。

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