能登杜氏

能登杜氏の歴史と特長

能登杜氏（のととうじ）は、石川県能登半島の珠洲市や鳳珠郡能登町を発祥としている日本酒の酒造りを行う杜氏集団です。この杜氏の流派は「能登流」として知られ、豊かな風味を持つ酒を生み出す技術が受け継がれています。

歴史の始まり

能登杜氏の起源は、江戸時代後期に遡ると言われています。当時、能登半島の丘陵地帯は農作物の耕作に適しておらず、農閑期には多くの農民が近畿地方に出稼ぎに行き、酒造りに従事しました。これが「能登衆（のとしゅう）」と呼ばれる人々で、独自の酒造技術を確立するきっかけとなりました。

明治時代には、能登衆を支援する組織である「能登屋」が設立され、彼らの技術が近江や山城の酒蔵へと広がっていきました。鉄道の開通により、出稼ぎ先は更に広がり、能登杜氏の活動範囲が全国へと拡大しました。

杜氏組合の形成

能登杜氏組合の設立については2つの説があり、明治34年（1903年）には初の酒造講習会が開催されたとの情報と、明治37年（1906年）に珠洲郡の杜氏組合が設立されたという情報があります。後者は、大正10年（1922年）に能登杜氏組合へと改称されました。

昭和時代の展開

昭和初期には、能登杜氏の活動範囲が北海道や満州、さらにはシンガポールなどにも及ぶまでに成長しました。記録によれば、昭和2年（1927年）には402名の能登杜氏が本土内外で活動しており、蔵人の数は1644名に達したとされています。

平成8年（1996年）には、ブラジルのペロタス市において、日本酒の現地生産の可能性を探るために能登杜氏が招聘されました。ここで生産された酒は、日本酒の需要の高い市場として期待され、山田錦と五百万石の種籾が送付され、現地での栽培と醸造が始まりました。

能登杜氏高等職業訓練校

能登杜氏の技術を後世に伝えるため、昭和42年（1967年）には珠洲市に「能登杜氏高等職業訓練校」が設立されました。この学校では、当初は3年、後に2年の訓練期間を設け、酒造に必要な技能や知識を教えることを目的としていました。ここから育成された杜氏は、現在の能登杜氏の活動を支える重要な存在となっています。

現在の活動

能登杜氏組合では、今もなお酒造講習会を開催し、産業の発展に寄与し続けています。平成13年には記念すべき第100回目の酒造講習会が行われ、その後も続いています。組合では、雇用保険の管理や研修活動を行い、業界の技術向上に努めています。

代表的な杜氏

能登流に属する代表的な杜氏には、農口尚彦や天保正一、波瀬正吉などがいます。彼らは、それぞれの酒造所で独自の風味を持った日本酒を生み出し、全国にその名を知られる存在となっています。彼らの技術と情熱によって、能登杜氏は今もなお、日本酒界で大きな影響を持ち続けています。

もう一度検索