腎盂腎炎

腎盂腎炎

腎盂腎炎は、細菌感染が原因で腎盂（じんう）および腎実質に炎症が起こる病気です。特徴的な臨床症状として、血尿、混濁尿、膿尿、細菌尿、そして発熱が挙げられます。病理学的には、腎杯の炎症、壊死、変性などが確認されます。獣医学においては、特にウシにおけるCorynebacterium属菌（特にCorynebacterium renale）による感染が重要視されています。

症状と恐ろしさ

腎盂腎炎の主な症状は、発熱、腰背部痛、悪心、CVA叩打痛（Costovertebral angle tenderness：肋骨脊椎角の叩打痛）、白血球尿、細菌尿などです。しかし、この病気の最も恐ろしい点は、敗血症、播種性血管内凝固症候群 (DIC)、急性呼吸窮迫症候群 (ARDS) などの重篤な合併症を容易に引き起こす可能性があることです。

一般的に、「発熱があれば腎盂腎炎のような上部尿路疾患、発熱がなければ膀胱炎のような下部尿路疾患」という経験則があります。しかし、発熱がない場合でも、感染が上行して腎盂腎炎に進行するケースもあるため、注意深い経過観察が必要です。また、腎盂腎炎の半数は腰痛や腹痛を伴わないことも知っておく必要があります。

治療

腎盂腎炎の治療では、多くの場合、基礎疾患の特定と治療が重要となります。これは、先天性尿路異常、慢性尿路感染、結石や腫瘍などによる尿路の狭窄や閉塞が原因となっているケースが多いためです。

悪寒や戦慄を伴う場合は、敗血症に陥っている可能性が高いため、緊急で血液培養と尿培養を採取し、経験に基づいた抗菌薬投与を開始します。起炎菌としては大腸菌が多いとされていますが、近年では耐性菌が増加しているため、広域抗菌薬（カルバペネム系やニューキノロン系など）の投与が選択される傾向にあります。また、過去に抗菌薬治療を受けていた患者が発症した場合には、バンコマイシンの投与も考慮されます。

腎臓は血流が豊富なため、菌血症や敗血症を引き起こしやすい臓器です。敗血症のマーカーとして、プロカルシトニンの測定が行われることもあります。

CTなどの画像診断で水腎症が著明な場合は、緊急処置として腎瘻造設（経皮的に腎盂を穿刺して排膿する）が行われることがあります。

慢性腎盂腎炎に対しては、ST合剤などの内服療法が行われますが、再燃や再発を繰り返しやすく、長期的には間質性腎炎から腎不全へと進行する可能性があります。

消化器症状が強い場合は内服が困難なため、入院が必要となることがあります。腎盂腎炎は顕微鏡的に見ると小膿瘍の集合体であり、解熱までに3日程度かかることが多いです。培養検査を繰り返し行い、抗菌薬の使用が適切であるかを確認します。また、腎実質膿瘍や腎周囲膿瘍の有無を確認するために、CT検査や超音波検査が行われます。

点滴治療では、セフトリアキソン1-2gが使用されることが多いです。治療期間は基本的に2週間であり、経口摂取が可能になったら内服薬に切り替えます。再発例では4-6週間かかることもあります。

関連項目

炎症

参考文献

獣医学大辞典編集委員会編集　『明解獣医学辞典』　チクサン出版　1991年　ISBN 4885006104
日本獣医病理学会編集　『動物病理学各論』　文永堂出版　2001年　ISBN 483003162X

外部リンク

健康の森 知って得する病気の知識 - 日本医師会
* 腎盂腎炎 - メルクマニュアル医学百科家庭版

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