自罪

自罪の概念

自罪（じざい、ラテン語: peccatum personale）は、キリスト教の罪の教義において重要な位置を占める概念です。これは、個人が意志によって行う悪行や不正直な考えを指し、より一般的には「罪」として理解されるもので、他者を傷つけたり、道徳的に誤った選択をすることによって発生します。

原罪との対比

自罪は原罪と異なる特性を持っています。原罪は人間が生まれながらにして持つ罪であり、全ての人に共通するものであるとされます。一方、自罪は個人の自由意志に基づくものであり、具体的に現実世界で行われる行為から生じます。

歴史的には、5世紀においてペラギウス主義が登場し、原罪の存在を否定した上で自罪の重要性を強調しました。この教義は、人間の自由意志を尊重し、自己の行動の選択に責任を持つべきであるという観点から支持されましたが、アウグスティヌスによって否定され、特に412年以降、彼とペラギウスの間で激しい論争が展開されました。最終的にはペラギウスが異端とされ、教会から破門される結果となりました。

大罪と小罪の区別

カトリック教会では、自罪をさらに大罪と小罪に分類します。この区別がどのように成り立っているかを理解することは、理解の深化に役立ちます。

大罪（peccatum mortale）は、重大な道徳的違反を指し、例えば殺人や姦淫が該当します。これらの行為は神との関係を著しく損なうものであり、犯した者は地獄に堕ちる危険性があるとされます。しかし、告解（和解の秘跡）を通じて心を入れ替えれば、赦しを受けることが可能です。ただし、罰が完全に免除されるわけではありません。

一方、小罪（peccatum veniale）は比較的軽微な過失や意識せずに犯す罪を指し、日常生活の中でしばしば見受けられるものです。小罪を犯しても神の「成聖の恩恵」を失うことはなく、聖体拝領を通じて赦されると考えられています。また、聖体拝領は大罪を防ぐための恵みを与えるとも言われています。

トリエント公会議の際には、信者が告白する際には大罪を一つずつ明らかにし、小罪は省略しても問題ないとされました。これはカトリック教会における罪の理解を深め、大罪と小罪という概念を広める契機となりました。

プロテスタント教会の見解

宗教改革の文脈では、プロテスタントの教会は大罪と小罪の区別を否定しました。その中で、ジャン・カルヴァンは「すべての罪は等しく死に至るものであり、大罪として扱われるべきだ」と述べ、罪の平等性を強調しました。このように、教派ごとに罪に関する教義には相違が見られます。

まとめ

自罪は、自由意志によって選択される悪行のことであり、キリスト教徒の道徳的責任を強調する要素となっています。その概念は時代を超えて多様な解釈を受けてきましたが、信者に対して倫理的な行動を促す重要な教えを提供しています。

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