自衛隊逮捕術

自衛隊逮捕術：安全かつ効果的な被疑者確保のための技術

自衛隊逮捕術は、陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊の警務隊員が、特別司法警察職員としての職務遂行において用いる逮捕術です。警察の逮捕術をベースとしていますが、相手が戦闘訓練を受けた可能性のある自衛官や、外国軍人を想定しているため、警察の逮捕術とはいくつかの重要な違いがあります。

警察の逮捕術との相違点

自衛隊逮捕術と警察の逮捕術は多くの共通点がありますが、最も大きな違いは、その目的と重点にあります。警察の逮捕術では、状況に応じて様々な対応が求められますが、自衛隊逮捕術では、相手を素早く、確実に制圧することに重点が置かれています。これは、相手が抵抗したり、暴力を振るったりする可能性が高い状況を想定しているためです。そのため、より速効性と威力のある技が重視され、訓練内容もその点に特化しています。

さらに、自衛隊逮捕術では、相手だけでなく、自分自身も負傷しないことを理想としています。これは、警務隊員が職務中に負傷することは、任務遂行能力の低下だけでなく、組織全体への損失にも繋がるためです。そのため、安全に相手を制圧できる技術の習得が、訓練において特に重要視されています。

自衛隊格闘術との違い

自衛隊格闘術は、敵を倒すことを目的とした格闘術ですが、自衛隊逮捕術は、あくまでも被疑者を確保することを目的としています。そのため、自衛隊格闘術のように相手を攻撃するような技は用いられず、相手を安全に拘束するための技が中心となっています。怪我を負わせるような攻撃は避け、最小限の力で効果的に制圧することが求められます。

特殊装備と訓練

自衛隊逮捕術では、状況に応じて様々な装備が使用されます。過去には、芦原英幸氏指導のもと開発されたトンファー型特殊警棒も採用されていました。これらの装備は、警務隊員の安全確保と、被疑者の抵抗を最小限に抑えるために重要な役割を果たしています。訓練においては、実践的な状況を想定したシミュレーションや、様々な抵抗方法への対応などが行われ、高い実戦能力が求められます。

参考文献

自衛隊逮捕術に関する情報は、専門書や雑誌記事などに散見されます。例えば、『月刊空手道』1999年9月号、10月号に掲載された「自衛隊「逮捕術」を学ぶ!!」や、荒木肇編著、陸上自衛隊小平学校協力『自衛隊警務隊逮捕術』(並木書房、2020年)などが挙げられます。また、平山隆一『増補版 自衛隊徒手格闘入門』並木書房、2002年なども参考になります。

結論

自衛隊逮捕術は、警察の逮捕術を基盤としながらも、自衛隊特有の状況を踏まえ、独自の工夫が凝らされた高度な技術です。速効性と威力、そして安全性という三点をバランス良く追求することで、警務隊員による安全かつ効果的な被疑者確保を可能にしています。その実戦的な訓練と、常に進化を続ける姿勢は、日本の安全保障に貢献する重要な要素と言えるでしょう。

もう一度検索