特別司法警察職員

特別司法警察職員とは

特別司法警察職員とは、警察官（一般司法警察職員）ではないものの、特定の法律違反に関して刑事訴訟法に基づく捜査権限を特別に与えられた職員のことです。これらの職員は、特定の分野における専門知識や技能を活かし、その分野の犯罪捜査を行います。例えば、水産庁の漁業監督官、皇宮護衛官、自衛隊警務官、麻薬取締官、労働基準監督官、海上保安官などが該当します。

特別司法警察職員は、犯罪捜査を行うことができるため、捜査に関する刑事手続き、逮捕、捜索差押、送検などの権限を有しています。これらの権限は、一般の警察官と同様に、法律に基づいて行使されます。

一般司法警察職員との相違点

特別司法警察職員が捜査している事件を、一般の警察官が捜査できないということはありません。警察も同じ事件を合同で捜査したり、独自に捜査したりすることがあります。このため、特別司法警察職員と一般警察官は、相互に連携しながら犯罪捜査を行うことがあります。

また、特別司法警察職員の制度は、警察の組織や能力では対応が難しい、または対応が困難な場面を想定して設けられていることがあります。例えば、海上保安官は、海上における犯罪捜査や取締りを専門としており、陸上を管轄する警察とは異なる装備や能力を有しています。

海上保安官は、公海における海賊行為や海賊放送を行う船舶を、領海の外であっても拿捕する権限を持っています。また、これらの船舶に乗船している者を逮捕したり、船内の財産を押収したりする権限も有しています。これらの権限は、海洋法に関する国際連合条約などの国際法に基づいています。日本では、海上保安庁がこの職務を担っています。警察庁や都道府県警察は、別途法令の規定がない限り、これらの権限を行使することはできません。

特別司法警察職員にも、一般司法警察職員と同様に、司法警察員と司法巡査の区別があります。これらの区別は、階級や権限の範囲によって定められています。

特別司法警察職員の一覧

特別司法警察職員は、刑事訴訟法第190条の規定に基づき、個別の根拠法によって定められています。また、司法警察職員等指定応急措置法（昭和23年法律第234号）第1条が追認する大正12年勅令第528号によって指定されている職員もいます。

以下に、主な特別司法警察職員をまとめます。

大正12年勅令第528号によるもの

林野庁
森林管理局職員
北海道
総合振興局・振興局の公有林野事務担当職員
民間
大型船舶の船長
大型船舶の甲板部、機関部、事務部の海員で各部の職掌上位者

個別法によるもの

警察庁
皇宮警察本部：皇宮護衛官（拳銃等武器携帯権限あり）
法務省
刑務所、少年刑務所、拘置所：刑事施設の長、その他職員（拳銃等武器携帯権限あり）
厚生労働省
地方厚生局：麻薬取締官（拳銃等武器携帯権限あり、おとり[[捜査]]可）
都道府県労働局（労働基準監督署を含む）：労働基準監督官（捜査権、逮捕権あり、武器携帯権なし）
水産庁
漁業監督官（捜査権、逮捕権あり、特殊警棒携帯権限あり）
経済産業省
産業保安監督部：鉱務監督官（捜査権、逮捕権あり）
国土交通省
地方運輸局：船員労務官（捜査権、逮捕権あり）
海上保安庁
海上保安官、海上保安官補（拳銃等武器携帯権限あり）
防衛省
自衛隊：自衛隊警務官、自衛隊警務官補（拳銃等武器携帯権限あり）
都道府県
各担当部署：鳥獣保護取締担当職員
麻薬取締員（拳銃等武器携帯権限あり、おとり[[捜査]]可）
漁業監督吏員

廃止された特別司法警察職員

過去には、以下のような特別司法警察職員が存在しましたが、組織の廃止や制度の変更により、現在は存在しません。

帝室林野局出仕
宮内省出仕、職員（猟場管守担当）
日本国有鉄道職員（駅長、車掌区長など）
鉄道公安職員
北海道庁営林区署勤務の地方技官、地方事務官
北海道庁河川監守たる地方事務官
府県警察部経済監視官、経済監視官補
経済安定本部経済査察官
海上公安官、海上公安官補
専売公社監視員
* 郵政監察官

特別司法警察職員の権限

特別司法警察職員は、それぞれの根拠法に基づき、捜査、逮捕、捜索、差押えなどの権限を行使することができます。ただし、これらの権限は、それぞれの職務範囲や専門分野に限定されており、一般の警察官のように、あらゆる犯罪を捜査できるわけではありません。また、特別司法警察職員の中には、拳銃などの武器を携帯する権限を持つ者もいますが、武器の携帯や使用についても、法律に基づいて厳格に定められています。

脚注

特別司法警察職員は、各分野の専門知識を活かし、犯罪捜査に貢献しています。彼らの活動は、社会の安全と秩序を維持するために重要な役割を果たしています。

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