自身番

江戸の治安を守る要、自身番とは

自身番とは、江戸時代に江戸や大坂などの町人地に設けられた番所のことです。町人による自治組織であり、現代の警察署、消防署、町内会などの機能を兼ね備えた、地域社会にとって非常に重要な存在でした。

自身番屋の構造と役割

自身番が詰めていた小屋は自身番屋、または単に番屋と呼ばれていました。多くは往来の激しい四つ辻に面して建てられ、町内の情報を集めたり、緊急時の対応拠点としての役割を果たしていました。

番屋の広さは通常9尺2間程度でしたが、実際には2〜3間ほどの広さがあり、土間と畳敷きの部屋がありました。冬には夜番の者が暖を取れるように炉が切ってあり、生活感のある空間でもありました。入り口には「自身番」や町名が書かれた腰障子が設けられ、夜間は開け放しにしておくのが原則でした。しかし、実際には番人が住み着いてしまったり、規定の大きさを超える立派な建物になったりすることも多かったようです。

自身番屋とは別に、木戸番屋というものも存在しました。これは町ごとに設けられた木戸の傍に建てられたもので、自身番とは別の組織が詰めていました。自身番屋と木戸番屋は、町内の主要な出入り口にそれぞれ配置され、相互に連携しながら町全体の安全を守っていました。

自身番の機能と業務

自身番は、町奉行の監督下に置かれ、町ごとに設置されました。複数の町が共同で自身番を設置する「最合（もあい）」という形態もありました。運営費用は各町が負担し、初期には地主自身が警備を担当していましたが、後に町代や書役といった専門の担当者が置かれるようになりました。

主な業務内容は、町触や差紙の伝達、出生・死亡届の受理、迷子や行倒れの保護など、現代の市役所や警察署が行うような業務を幅広く担っていました。また、「自身番日記」という記録を作成し、町内の出来事や事件などを詳細に記録していました。

自身番は、不審者の取り締まりや火災の際の初期対応も重要な役割でした。番屋には捕り物道具や火消道具が常備され、火災発生時には半鐘を鳴らして町民に知らせ、初期消火活動を行いました。火事の際の炊き出しも自身番の重要な仕事でした。

定町廻り同心との連携

自身番は、町奉行所の定町廻り同心と密接に連携していました。定町廻り同心は、毎日町々の自身番屋を巡回し、町内の状況を確認していました。犯罪の容疑者がいる場合は、自身番屋で取り調べが行われることもありました。番屋の柱には鉄の環が打ち付けられており、捕らえた者の捕縄尻を結び付けられるようになっていました。

自身番の中でも、親父橋際にあった番屋は、市中引き回しにされた罪人の休憩所として知られていました。

大坂における自身番

大坂では、自身番は会所とも呼ばれていました。江戸のように独立した建物ではなく、一般の町家と軒を連ねて建てられており、会所守が家族と一緒に住み込んでいました。

まとめ

自身番は、江戸時代の町人地における治安維持の要であり、地域社会にとって不可欠な存在でした。現代の警察署、消防署、町内会などの機能を兼ね備え、町人の生活に密着した様々な業務を担っていました。自身番の存在は、江戸の町人文化を理解する上で欠かせない要素と言えるでしょう。

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