木戸番

江戸の町の門番、木戸番とは

江戸時代、江戸や京都、大坂などの城下町では、町ごとに木戸が設けられ、その番人として「木戸番」がいました。彼らは町の治安維持に欠かせない存在でした。

木戸番の役割

木戸番は、主に夜間の町の安全を守る役割を担っていました。具体的には、以下の業務を行っていました。

木戸の開閉: 夜になると木戸を閉め、不審者の侵入を防ぎました。夜間、特別な用事で通行する際は、木戸番の許可を得て、木戸脇の潜り戸を通る必要がありました。
夜警: 夜間、拍子木を打ち鳴らしながら町を巡回し、不審者や火災の発生に目を光らせました。この拍子木の音は、次の木戸番への連絡手段でもありました。
火の見: 木戸の近くには火の見櫓が設置されていることが多く、火災発生時には半鐘を鳴らして知らせる役割も担っていました。
非常時の対応: 盗賊や狼藉者が現れた際には、木戸を閉めて通行を遮断し、事態の収束に協力しました。
炊き出し: 火事の際には、木戸番の妻が炊き出しを行い、木戸番がそれを火災現場へ運ぶこともありました。

木戸番の生活

木戸番は、木戸のそばに建てられた番小屋に住み込みで働くことが一般的でした。多くは高齢の男性で、夫婦で住むことは原則として禁止されていました。しかし、時代が進むにつれて、番小屋を拡張して家族で住む例や、木戸番の職が売買されることもあったようです。また、木戸番の給金は決して高くなかったため、生活を支えるために内職をする者が多くいました。駄菓子や蝋燭、草履などを売ったり、夏には金魚、冬には焼き芋などを売ったりする姿が見られました。特に、焼き芋は木戸番の定番の内職として知られていました。

木戸番の収入

木戸番の給金は、町内の各家から集められたお金で支払われていました。毎月、各家からわずかなお金を徴収し、それをまとめて木戸番に渡していました。

木戸番の勤務体制

木戸番は、夜の四ツ時（午後10時頃）に木戸を閉めていました。夜間に通行する者は、木戸番に申し出て許可を得る必要がありました。通行する際には拍子木が叩かれ、その音によって次の木戸番に通行者の存在が知らされました。

京都の木戸番

京都では、町奉行所の触書で「番人」や「木戸門」と記されることが多かったようです。京都の木戸番は、町の四辻に面した木戸門の開閉や警固を担当し、町が雇用した下位身分の人々が務めていました。江戸の木戸番と異なり、住み込みではなく、番小屋も畳一枚程度の小さなものでした。また、副業をすることもありませんでした。

木戸番に関する町の取り決め

町奉行所は、木戸番の役割を明確にするため、様々な取り決めを出していました。例えば、夜間の通行人の取り締まりを強化したり、木戸が破損した場合は速やかに修理することなどを命じていました。また、路地の入り口にも木戸を設けて、町の安全を確保するよう努めていました。

木戸番のその後

明治時代になると、木戸は徐々に撤去され、木戸番の役割もなくなりました。しかし、木戸番が町の安全を守っていたという歴史は、今もなお語り継がれています。

まとめ

木戸番は、江戸時代の城下町において、夜間の治安維持に不可欠な存在でした。木戸の開閉、夜警、火の見など、様々な業務をこなし、町の人々の安全な暮らしを支えていました。その生活は決して楽ではなかったものの、町の人々からは頼りにされていた存在でした。

参考文献
稲垣史生『考証 「江戸町奉行」の世界』 新人物往来社 1997年 ISBN 4-404-02486-X
楠木誠一郎『江戸の御触書 生類憐みの令から人相書まで』 グラフ社 ISBN 978-4-7662-1161-0
丸山俊明『京都の木戸門と番人〜京都の夜を守ったものたち』大龍堂書店 ISBN 978-4-924726-41-3
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山本博文『江戸お留守居役の日記 寛永期の萩藩邸』 読売新聞社 ISBN 4-643-91060-7
横倉辰次『江戸町奉行』 雄山閣出版 ISBN 4-639-01805-3
吉原健一郎『江戸の町役人』 吉川弘文館 ISBN 978-4-642-06306-7
『国史大辞典』第4巻 吉川弘文館 ISBN 978-4-642-00504-3
『江戸学事典』 弘文堂 ISBN 4-335-25053-3

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