自転車歩行者道

自転車歩行者道（自歩道）とは

自転車歩行者道（じてんしゃほこうしゃどう）は、日本の道路構造令における用語で、自転車の交通を前提とした、車道に併設された幅の広い歩道を指します。道路交通法上の「自転車通行可の歩道」とは概念が異なりますが、本稿では両者を区別せず、「自歩道」と略して解説します。また、海外の類似の自転車歩行者道についても触れます。

道路法の「自転車歩行者専用道路」は、独立した専用道路であり、車道に併設される歩道ではありません。これらの道路には、「自転車及び歩行者専用」の道路標識が設置されます。

概要

自歩道の定義は、道路構造令の自転車道とほぼ同じですが、「及び歩行者」という文言が追加されています。「自転車道の整備等に関する法律」における自転車道の定義にも含まれます。しかし、道路交通法ではこの用語は用いられず、歩道として扱われることが多く、外見上も一般の歩道と区別がつかない場合があります。

通常、道路管理者が設置した自歩道に対し、交通管理者（公安委員会）が道路交通法に基づき「普通[[自転車]]が歩道を通行することができる」指定を行います。この指定は、自歩道として設計されたか否かを問いません。利用者にとって、標識の有無だけで設計の違いを判断することは困難であり、利用実態に影響を与えないため、自歩道と自転車通行可の歩道は区別されないことが多いです。

設置・指定基準

自歩道の幅員は、歩行者の交通量が多い道路では4メートル以上、その他の道路では3メートル以上と定められています（1970年から1993年までは2メートル以上でした）。

自転車通行可の歩道は、以下の条件で指定されます。

歩行者の通行に支障がないこと
縦断勾配が10%未満で、自転車の通行に危険がないこと
原則として歩道幅員が2メートル以上（橋梁・トンネル内などは1.5メートル以上）あること
歩道通行部分の指定は「歩道幅員がおおむね4.0メートル以上の道路で、かつ、歩行者の通行に特に支障が認められない」ことが要件

2011年には、普通[[自転車]]歩道通行可とする歩道の幅員を原則3メートル以上とし、3メートル未満の歩道については見直しが指示されました。

歴史

1960年代のモータリゼーションの進展に伴い交通事故が急増し、道路法令が改正されました。自転車関連団体からの要望もあり、自転車専用道路の設置や法制化が進められました。1970年には道路構造令が改正され、自転車道と共に自歩道の規定が盛り込まれました。これは、自転車を自動車交通から分離する考えに基づくもので、事故防止対策として当時自明の理と考えられていました。実際、自転車通行可の歩道が増えるにつれて、対自動車の左折事故における自転車利用者の死亡率は低下しています。

自転車の歩道通行の要件緩和

1970年の道路交通法改正で、自転車の歩道通行が緊急措置として正式に認められ、1978年の改正で“歩道に上げる”自転車の要件を定めた普通[[自転車]]という概念が導入されました。その結果、道路整備、利用実態ともに自転車の歩道通行が定着しました。1982年には、自歩道の設置要件から歩行者の交通量に関する規定が削除されました。

2007年の道路交通法改正では、以下の2つの場合にも普通[[自転車]]の歩道通行が認められました。

1. 運転者が12歳以下の子供、70歳以上の高齢者、または身体障害者である場合
2. 車道等の状況から自転車の通行の安全を確保するため、歩道を通行することがやむを得ないと認められる場合

ただし、警察官等が現場で通行を禁止した場合は通行できません。この改正に合わせ、「自転車安全利用五則」などで「自転車は、車道が原則、歩道は例外」であることが確認されましたが、歩道通行の要件は事実上緩和されました。

整備延長

2006年4月現在、自歩道の総延長は7万2119キロメートルに及び、自動車交通から分離された自転車走行空間の91.7%を占めています。また、自転車通行可の歩道の延長は6万8992.6キロメートルで、歩道の総延長の44.2%を占めています。

自転車の通行方法

自歩道における自転車の通行方法は、道路交通法第63条の4に規定されています。

普通[[自転車]]は原則として、歩道の中央から車道寄りの部分を徐行しなければなりません。歩行者の通行を妨げる場合は一時停止が必要です。法令上、歩道での双方向通行は制限されていません。

普通[[自転車]]通行指定部分

歩道に白線と自転車の記号からなる道路標示がある場合、そこは「普通[[自転車]]通行指定部分」と呼ばれます。この部分は歩道の一部分であり、自転車の「通行すべき部分」を示していますが、自転車はこの指定部分を外れて通行してはなりません。歩行者にはこの部分をできるだけ避けて通行するよう努力義務が課せられていますが、通行は禁止されていません。自転車は、歩行者がいない場合に限り、「安全な速度と方法で」通行できます。

自歩道の意義と問題点

国土交通省と警察庁の検討委員会は、自転車の歩道通行を可能にしたことで、自転車乗車中の死亡事故が大幅に減少し、自転車の交通分担率も高く維持されたと指摘しています。

しかし、自歩道は本来歩行者のために設置される歩道を自転車交通にも供するものであり、歩行者の権利を侵害し安全を脅かすという問題も指摘されています。また、自転車にとって自歩道は、段差が多く舗装が不適切な場合があり、快適性を損なうという問題もあります。

海外の自転車歩行者道

車道に併設された通行空間を自転車と歩行者が共用する形態は、日本独自のものではありません。ドイツ、ノルウェー、フランス、イタリア、イギリス、オーストラリア、アメリカ、オランダなど、多くの国で類似の形態が見られます。

まとめ

自転車歩行者道は、自転車の安全確保と交通分担率の維持に貢献してきました。しかし、歩行者の安全性や快適性の問題、自転車の走行性能を十分に発揮できないという課題も抱えています。今後の自転車利用環境の整備においては、これらの点を考慮した上で、より安全で快適な通行空間の実現を目指す必要があります。

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