興勢の役

興勢の役の概説

興勢の役（こうせいのえき）は、244年に中国の三国時代で蜀と魏の間で行われた戦闘である。この戦いでは、魏の将軍曹爽が10万人の軍を指揮して蜀の領土に侵攻したが、蜀の王平が興勢山にてこれを迎え撃ち、結果的に曹爽は軍を撤退させることとなった。この戦いは、駱谷の戦いとも称される。

事前の経緯

この戦いが勃発する前、239年1月に魏の明帝曹叡が崩御し、その後に曹爽は司馬懿と共に若き皇帝曹芳の補佐を行っていた。曹爽はその権力を独占するための策略を練るも、司馬懿の過去の功績を考慮し、軍権を奪うことは叶わなかった。241年には樊城を救援し、呉軍を退散させるなどの成功を収めた。

243年10月、蜀の司令官蔣琬が駐屯地を撤収させたことを受け、曹爽は蜀に対する遠征の機会を見出し、派遣を決断した。彼は部下らからの進言の後に遠征を決意し、出発の準備を進めることとなったが、司馬懿はこの行動を危険視して諌めた。しかし、曹爽は蜀の薄さを見込み、この機会を逃すべきではないと考えた。

戦いの経緯

244年3月、曹爽は夏侯玄や郭淮を指揮官として漢中に侵攻を開始した。しかし、漢中の守備兵は3万人に満たず、主力は後方にいた。指揮官王平は防衛を担い、後退する提案を却下し、援軍を待ちながら魏軍の進撃を防ぐ戦略を取ることにした。

王平は魏軍の進行経路の一つである興勢山に部隊を配置し、騎兵を混ぜることで敵に誤解を与えようとした。244年4月、魏軍は待ち受けた蜀軍に足止めを喰らい、その間に蜀の援軍が到着した。そして、戦は長期にわたり、魏軍は補給面でも苦戦することとなった。

戦局が長引く中、曹爽の軍の撤退について意見が分かれる。主戦派の将軍たちは懸命に戦おうとする一方、事情を考慮した者たちが撤退を提言する。そこに司馬昭の助言も加わり、曹爽は最終的に撤退を決断した。

そうした中、蜀の費禕が撤退する魏軍を攻撃し、曹爽にとって厳しい戦況が続いた。だが、郭淮の活躍もあり、曹爽は何とか軍をまとめて撤退を終えた。

戦後の影響

この戦いの結果、蜀の費禕は名声を得て成郷侯に封ぜられ、王平は「北の王平」と称されるほどの評判を得た。一方、曹爽の威信は地に落ち、司馬懿との権力争いにおいて不利な状況に陥る。結果的に、この戦いは司馬懿による権力掌握の一因とされる。また、魏軍が物資や家畜を失った影響で羌族からの反発が強まり、数年後には大規模な反乱が勃発した。

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