夏侯玄

夏侯玄（かこう げん）

夏侯玄（209年 - 254年）は、三国時代の魏の武将・政治家であり、字は太初（たいしょ）。夏侯尚の子として生まれました。その才能は早くから認められましたが、政治的な駆け引きの中で不遇な生涯を送りました。

生涯

夏侯玄は若くして名声を博し、20歳で散騎侍郎・黄門侍郎に任じられます。しかし、曹叡（明帝）に謁見した際、皇后の弟と同席させられたことを嫌い、不興を買って左遷されました。

曹芳（斉王）の時代になると、従兄弟の曹爽が権力を握り、夏侯玄も重用されます。彼は人物眼に優れていたため、登用した武官は皆優秀でしたが、当時の護軍における賄賂の慣習を止めることはできませんでした。

司馬懿から政治について意見を求められると、夏侯玄は九品官人法を批判し、中正官の権限縮小を主張しました。さらに地方制度の抜本的な改革を提案しますが、司馬懿は彼の意見に消極的な態度を示します。

その後、征西将軍に昇進し、曹爽と共に蜀漢へ侵攻しますが、輸送の困難から大きな被害を出します（興勢の役）。司馬懿の進言により撤退を決意し、帰還することとなりました。

高平陵の変後、曹爽が処刑されると、夏侯玄は中央に召還され、大鴻臚となります。従父の夏侯覇が蜀漢に亡命する際、同行を求められますが、これを拒否しました。

その後、太常に転任しますが、曹爽との関係を理由に冷遇されます。李豊らは夏侯玄を擁立して司馬師を討とうと計画しますが、露見し、夏侯玄も逮捕されます。

嘉平6年（254年）、夏侯玄は大逆罪に問われ、腰斬刑に処されました。享年46歳。彼は刑に臨んでも顔色一つ変えず、堂々とした態度だったと伝えられています。

人物評価

夏侯玄は、その才能を高く評価される一方で、野心家であるという評価も存在しました。共に名声を集めた何晏からは「ひたすら深い。それゆえにこそ天下の人々の意志に通暁する」と評されました。娘婿である和嶠からは敬慕されました。

傅嘏は、夏侯玄の器量より大きな野心を危惧し、交際を拒否しました。

陳寿は、『三国志』において、夏侯玄の才能を認めつつも、曹爽の誤りを正すことができなかった点を批判しています。

著作

夏侯玄は学者としても優れており、『楽毅論』『張良論』『本無肉刑論』などの著作を残しました。特に『楽毅論』は、王羲之が書写したことで有名です。

まとめ

夏侯玄は、優れた才能を持ちながらも、政治的な状況に翻弄され、悲劇的な最期を遂げた人物です。彼の生涯は、三国時代の権力闘争の厳しさを物語っています。

その才能から多くの人に惜しまれ、現代でも評価される人物です。彼の著作は今もなお読み継がれています。

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