費禕

費禕（ひ い）について

費禕は中国の後漢末期から三国時代にかけて蜀漢で活躍した政治家であり武将です。字は文偉で、荊州江夏郡鄳県の出身です。彼は同族に費伯仁、費観がおり、子供には費承、費恭、そして劉璿の妻となった娘がいます。『三国志』の蜀書に彼に関する伝が残されています。特に蔣琬や董允と共に蜀の政治を支えたことで知られ、彼らは蜀の四相と称されています。

人生の始まり

費禕は幼少期に父母を失い、一族の中で一世代上の費伯仁に世話になります。費伯仁の家系は、当時益州牧であった劉璋とつながりがあります。このため、費伯仁の助けで費禕は混乱する時代を経て益州で遊学の機会を得ました。当時、益州は比較的安定していたため、彼にとっては学問を磨く好機でした。

建安19年（214年）、劉備が益州を治めると、費禕はその家臣として留まり、董允、許叔龍と共にその名を馳せました。政治的な手腕に長けていたため、友人の董允と共に劉備の嫡子、劉禅の補佐に任じられ、やがて黄門侍郎としての地位を得ます。劉璋の外戚としての立場から、諸葛亮にも大いに信任されました。特に呉との交渉の際には、孫権側の者たちとの激しい論争にも冷静さを保ち、蜀の中心人物としての評価を受けました。

軍事的・政治的活動

その後、費禕は侍中に昇進し、北伐に際して諸葛亮から請われて参軍に選ばれます。諸葛亮は『出師表』の中で、彼を「良実、志慮忠純」「貞良死節の臣」と讃えています。建興8年（230年）には中護軍に、続いて司馬に任命されます。

その時期、幕営内では魏延と楊儀が対立し、激しい争いが続いていました。費禕は二人の仲裁に入ることが多く、その人格と判断力によって彼らをまとめ上げる役割を果たしました。陳寿は「力があっても難しい性格の二人が使い物になったのは、費禕の取り成しがあってのことであった」と記しています。

最期とその後

諸葛亮の死後、費禕は政権を担い、蔣琬と共に蜀漢を支えました。蔣琬が病に倒れると、費禕は大将軍として権限を持ちながらも、軍事行動に対しては消極的な姿勢を示します。延熙7年（244年）には魏軍の侵攻に際し、総指揮として大勝利を収めました。

その後、費禕は蔣琬の死を受けて漢中に駐屯し、軍事と国政の全てを担います。彼の生涯の最後は延熙16年（253年）に、強酒に酔った際に魏の降将に襲われて死去し、敬侯として追贈されました。彼の死は蜀漢にとって大きな転機となり、その後の政権は姜維の下で続くことになりますが、費禕が築いた蜀の政治体制は次第に崩れていきました。

費禕の人物像

費禕は仕事の合間に宴席や遊びを楽しむ一方、私生活では慎み深く、質素な生活を心がけました。彼の真摯な姿勢と知恵は高く評価されましたが、その一方で士人の性質として過剰な信頼のために警戒心に欠ける一面もありました。彼の死後、蜀漢は大きな影響を受け、内部の権力争いや北伐の失敗などが続き、次第に衰退していくこととなります。

伝説

費禕にまつわる伝説も数多く残されています。例えば黄鶴楼の伝説では、彼が黄色い鶴に乗って飛来したとされています。また、彼が万里橋で呉への使者として出発する際の言葉も伝えられています。これらの伝説は、彼が有していた影響力と魅力を反映しています。

このように費禕は蜀漢の歴史において重要な存在であり、彼の生涯は多くの人々に影響を与えました。

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