興徳王

興徳王（こうとくおう）

興徳王（777年 - 836年）は、新羅の第42代の王（在位：826年 - 836年）であり、激動の時代を生きました。諱は秀宗、後に景徽と改名。父は元聖王の元太子・金仁謙、母は淑貞夫人で、昭聖王と憲徳王の同母弟にあたります。王妃は昭聖王の娘である章和夫人です。

即位までの経緯

819年、上大等の金崇斌が死去した後、伊飡であった金秀昇（後の興徳王）が後任となりました。822年には副君となり、月池宮に住まわされました。副君は王太子の別称とされ、これは秀昇が王太子に立てられたことを意味します。

しかし、『旧唐書』や『新唐書』では、興徳王は憲徳王の子とされています。一方、『三国史記』によれば、憲徳王には複数の王子がおり、太子妃も別にいたことが記されており、この記述とは矛盾します。結局、憲徳王の同母弟である興徳王が、王子たちを差し置いて王位を継いだ経緯は、正確には不明です。

治世

興徳王は、唐の文宗から〈開府儀同三司・検校太尉・使持節・大都督鶏林州諸軍事・兼持節充寧海軍使・新羅王〉に冊封されました。この冊封の時期について、『旧唐書』と『三国史記』で記述にずれがありますが、王母と王妃の冊立も同時に行われました。

唐との交流を積極的に行い、文化や文物の導入に努めました。827年には、旧高句麗系の僧・丘徳が唐から経典を持ち帰り、828年には金大廉が持ち帰った茶の種子が智異山に植えられ、新羅で喫茶が盛んになるきっかけとなりました。

国内では、827年に「速富の術」という宗教運動が流行しましたが、人々を惑わすものとして教祖は流刑に処されました。832年には旱魃と大雨による凶作に見舞われ、民衆が盗賊化する事態となりました。王は使者を派遣して慰撫に努め、翌年にも凶作と疫病が蔓延すると、自ら巡幸して民に穀物を分け与え、民心の安定を図りました。

834年には、身分による服装や家屋の区別を明確化する教書を発布し、奢侈を禁じました。この教書では、真骨、六頭品、五頭品、四頭品、平民という身分序列が規定され、従来の「骨制度」に加え、「頭品制度」が明確化されました。これら二つを合わせて新羅の骨品制度と呼びます。

興徳王は在位11年にして836年に死去し、章和王妃の陵に合葬されました。

王妃への深い愛

興徳王は、即位直後に王妃の章和夫人を亡くし、深く悲しみました。群臣が後妃を迎えることを勧めても、「つがいの鳥でさえ相方を失って悲しむのに、どうしてすぐに再婚できるだろうか」と拒否し、後宮の侍女も近づけず、側には宦官だけを置いていたとされています。

この悲しみを表す逸話として、『三国遺事』には、唐から連れてきた鸚鵡のつがいに関する話が伝えられています。雌鳥が死んだ後、雄鳥は鏡に映った自分の姿を雌鳥と思い込み、それが偽りであると気づくと悲しんで死んでしまったという話です。王はこの出来事に感銘を受け、歌を詠んだとされていますが、その内容は不明です。


興徳王の治世は、新羅社会の変革期であり、その生涯は多くの教訓を残しています。

脚注

関連項目

骨品制
唐
敬宗（在位：824年 - 826年）
文宗（在位：826年 - 840年）
渤海
宣王（大仁秀）（在位：818年 - 830年）
大彝震（在位：830年 - 857年）

参考文献

井上秀雄『古代朝鮮』、日本放送出版協会＜NHKブックス172＞、1972 ISBN 4-14-001172-6
『三国史記』第1巻 金富軾撰 井上秀雄訳注、平凡社〈東洋文庫372〉、1980 ISBN 4-582-80372-5
『三国史記』第3巻 金富軾撰 井上秀雄訳注、平凡社〈東洋文庫454〉、1986 ISBN 4-582-80454-3
『完訳 三国遺事』一然著 金思燁訳、明石書店、1997 ISBN 4750309923（原著『完訳 三国遺事』六興出版、1980）

外部リンク

慶州市公式サイト#文化遺産（国会指定文化財-史跡）

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