興津弥五右衛門の遺書

興津弥五右衛門の遺書

『興津弥五右衛門の遺書』は、森鷗外によって書かれた短編小説であり、江戸時代の随筆である「翁草」に収録されている「細川家の香木」という逸話を基にしている。この作品は、1912年に乃木希典が殉死した直後に初稿が発表され、翌年に改作された。鷗外が歴史小説を手がけるきっかけとなった作品としても知られている。

執筆の経緯

1912年9月13日、明治天皇の大喪の礼に参列した鷗外は、乃木希典が殉死したという知らせを受けた。当時の社会では、乃木の殉死を賛美する声が多く上がった一方で、報道機関や知識人の間では否定的な意見も見られた。また、乃木の遺書がなかなか公表されず、一部が改竄された状態で発表されたことも、社会的な騒動を呼んだ。

このような状況下で、鷗外は本作の執筆に取り掛かり、9月18日に青山斎場で行われた乃木の葬儀の帰りに、中央公論に原稿を渡した。作品は翌10月に掲載されたが、鷗外は史実に関する資料をさらに整理し、1913年春に改作を行った。

本作の執筆後、鷗外は立て続けに『阿部一族』や『佐橋甚五郎』といった歴史小説を執筆し、1913年6月にはこれら3作をまとめた歴史小説集『意地』を出版した。

内容

物語は、長年死に場所を探し求めていた興津弥五右衛門が、主君の十三回忌にあわせて殉死を遂げる際に残した遺書という形式で語られる。

関連情報

高桐院 - 興津弥五右衛門の墓がある。

外部リンク

『興津弥五右衛門の遺書』：新字新仮名 - 青空文庫
『興津弥五右衛門の遺書（初稿）』：新字新仮名 - 青空文庫
『意地』 - 国立国会図書館デジタルコレクション
現代語訳 四国の山なみ
松井利彦「森鴎外の士道 : 「興津弥五右衛門の遺書」」

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