航海年鑑

航海年鑑について

航海年鑑（こうかいねんかん）、または航海暦は、航海士が船舶の位置を特定する際に重要な役割を果たす天体に関する情報が記載された刊行物です。本書は、天測航法と呼ばれる手法を利用して、船の正確な位置を把握するために使用されます。特に、太陽、月、惑星、恒星の位置を一年を通じて一時間毎に示しており、航海や航空の分野での不可欠な資料となっています。

天測航法の概要

天測航法を用いる際、航海士は六分儀を使って天体の高度を測定し、海洋クロノメーターで時間を記録します。この天体の高度と予測される位置での予想高度を照らし合わせることで、実際の位置がどの程度の距離離れているかを判断します。この方法によって、航海士は海上において自艇の位置を確認し、安全な航行を行うことができます。

イギリスとアメリカの航海年鑑

イギリスでは、1767年に初版が発行されて以来、HM航海年鑑局が年次で航海年鑑を刊行しています。一方、アメリカ合衆国では1852年からアメリカ海軍天文台（USNO）が年鑑を作成し、1958年からは両国の海軍のために共同で「天文年鑑」を発行しています。このデータはUSNOのウェブサイトからオンラインで入手が可能で、実際の航海にも利用されています。

また、商業的な年鑑も存在し、1877年に創刊されたブラウンの年鑑などがあります。これらの年鑑は貿易広告や潮見表の情報を含んでおり、商業航海にとっても重要な資料でした。

日本における航海年鑑の歴史

日本では、明治中期までイギリスの航海年鑑を利用していましたが、日露戦争の際に外国の暦が十分に流通しない状況となったことから、1907年に日本海軍が独自の「海軍航海年表」を創刊しました。その後、水路部や海上保安庁に引き継がれ、様々な航海や航空用の暦が発行されてきました。しかし、2022年に最新の「天測暦」が廃刊となり、現在は英国等が発行する天測暦を参照するように指導されています。

主な航海用暦

• - 海軍航海年表：1906年創刊、天文・潮汐に関する諸表を提供。
• - 航海年表：1919年から出版される。
• - 天測暦：特に天文航法に特化した暦。
• - 潮汐表：日本の潮流や潮汐に関する情報をまとめたもの。

これらの資料は天文観測の精度を向上させ、航海士にとっての作業を助けるために作成されましたが、近年はその廃刊が進んでいます。

天文情報の変遷

航海士が位置を知る技術は、情報技術の進歩に伴い変化し続けており、最新の情報は国立天文台や他国の天文資料が利用されています。特に、航空年表は空の航海にも対応しており、天文航法の新たな進展を示しています。

このように、航海年鑑は海上での航行に不可欠な資料であり、航海士が正確な位置を認識するための支えとなる重要な役割を担っています。

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