船尾昭直

船尾昭直

船尾昭直（ふなお あきなお）は、戦国時代から安土桃山時代にかけての武将で、佐竹氏の家臣として活躍しました。その生涯は、激動の時代を背景に、佐竹氏の勢力拡大と、自身の領地を守るための戦いに彩られています。

出自

船尾氏の祖は、陸奥国の有力豪族・岩城氏の一族である岩城隆輔（隆相）であるとされています。隆輔は、岩城氏と対立していた岩崎氏を滅ぼした後、その本拠地であった船尾（現在の福島県いわき市）を与えられました。しかし、船尾氏は岩城氏の最前線に位置していたため、度々所領を失う危機に見舞われました。隆輔の子・隆直は、そのような状況の中、天文22年（1553年）頃から常陸国の佐竹氏に従属するようになります。さらに、後北条氏とも関係を結び、弘治年間に船尾氏が所領を失った際には、北条氏康と佐竹義昭が共同で圧力をかけ、隆直を復帰させています。

生涯

昭直は、船尾隆直の子として誕生しました。天文22年（1553年）11月には、主君である佐竹義昭から偏諱を受け、昭直と名乗るようになりました。翌天文23年（1554年）には、伊勢神宮参詣のついでに諸国を旅していた佐竹氏の家臣の中に、「船尾九郎三郎」という人物がいたことが、播磨国浄土寺（兵庫県小野市）の壁に残された落書きから確認されています。この人物が昭直であると考えられています。

昭直は、早い時期から佐竹義昭・義重に仕え、主に南奥の諸将との交渉役として活躍しました。高野山へ出奔しようとした石川晴光（道堅）を説得したり、白河結城氏と佐竹氏・岩城氏との和睦交渉にあたったりするなど、その活躍は多岐に渡ります。天正3年（1575年）には、滑津城を与えられ、赤館城の佐竹義久と共に佐竹氏の南陸奥における先鋒を担うようになりました。

佐竹義重の次男・喝食丸（後の蘆名盛重）が白河結城氏の養子に入った際には、後見役を務めました。その後、喝食丸が改めて蘆名氏の養子となった際、昭直は会津には同行せず、この関係は蘆名氏の滅亡まで継続されました。天正13年（1585年）には、矢田野顕義に娘を嫁がせています。

天正17年(1589年)、蘆名氏を滅ぼし、蘆名盛重を追った伊達政宗が須賀川城の二階堂氏を滅ぼすと、結城義親や石川昭光、浅川豊純など、佐竹方だった南陸奥の国人たちがこぞって伊達方に寝返りました。昭直の居城である滑津城は、伊達方の武将に取り囲まれる形となりました。昭直も伊達方への寝返りを申し入れたものの、政宗からは許されず、伊達氏とその傘下の石川氏、浅川氏によって何度も攻め込まれることとなりました。昭直は辛うじて城を守り抜きましたが、佐竹義重の命により、最終的には兵を退くこととなりました。その後、豊臣政権による宇都宮仕置によって、滑津城は白河結城氏・石川氏らの旧領と共に会津領に編入され、他の所領も文禄4年（1595年）に行われた大規模な知行割替によって茨城郡1600石に移封されました。移封は子・義綱に対して行われており、この時には昭直は死亡もしくは隠居していたと考えられています。

その後の主家である佐竹氏の秋田転封の際、義綱は突如出奔し、弟の林勝貞のみがそのまま佐竹氏に仕えました。その後、大坂冬の陣において、叔父の勝貞に従って出陣した義綱の子・隆広が討死したため、これを惜しんだ佐竹氏は、その弟・勝光を300石で登用し、船尾氏の再興を許しました。なお、義綱はその後も秋田に赴くことなく、寛永7年（1630年）に米沢で没しています。

参考文献

『秋田藩採集文書』（六）
『佐竹諸士系図』（九 桓武天皇末流船尾氏系図）
『船尾家文書』（『茨城県史料』中世編4、「天文廿二年霜月二日付佐竹義昭一字状写」）
『戦国遺文』（一 所収555号、（弘治三年）九月七日付北條氏康書状」）
『いわき市史』（八 所収16号、（永禄元年）閏六月十五日付佐竹義昭書状写」）
『石川家文書』（『仙台市史』資料編10所収588号、「天正十七年極月廿八日付伊達政宗書状」）
『浅川家文書』（『仙台市史』資料編10所収595号）
佐々木倫朗「戦国期権力と在地領主の主従結合」（所収:村井章介 編『中世東国武家文書の研究』（高志書院、2008年） ISBN 978-4-86215-040-0）

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