船引き

船引き（ふなひき）について

船引き、またはブルラーク（ロシア語: Бурлак）は、川を上流に戻すために荷船やはしけを陸から綱などで引いて進む行動や、これを行う人々を指します。この技術は、各国の水運の歴史において重要な役割を果たしました。

ロシアにおける船引き

ロシアの代表的な河川であるヴォルガ川は、古くから交通の要として利用されてきました。19世紀前半まで、船引きは非常に一般的な手段とされていました。ヴォルガ川を遡る際には、多くの人々がこの技術を駆使し、漁業や交易に携わりました。特に、ヴォルガの船引き歌と呼ばれる民謡はこの行為と深く結びつき、歌い継がれています。この民謡はミリイ・バラキレフによって1866年に取り上げられ、多くの歌手によって歌われています。

船引き歌の影響

歌の中では、舟を引く苦労や人々の誇りが表現されており、特にフョードル・シャリアピンやダーク・ダックスなどによって広まりました。また、歌詞の日本語訳も存在し、その文化的価値を高めています。

船引きを描いた美術

イリヤ・レーピンの絵画『ヴォルガの船引き』は、1870年から1873年の間に制作され、特に有名です。この作品は、民衆の苦労や誇りを如実に描写しており、当時の官製美術界に対抗する「移動派」の作品として評価されています。発表直後にはウラジーミル・アレクサンドロヴィチ大公に買い上げられ、その後ヨーロッパ各地で展示され、多くの人々の心をつかみました。これはレーピンが重要な画家として認識されるきっかけとなりました。

中国の船引き

中国でも船引きは盛んに行われていました。長江や嘉陵江などでは、急流を遡るために利用され、多くの人々が関与しました。近年では「長江三峡船引き人夫文化祭」などのイベントも行われ、観光資源としても注目されています。

日本の船引き

日本においても、特に長良川のような主要な河川では、船引きの技術が使われてきました。地方の川での舟運が発展し、船を引っ張る人々の存在は見逃せません。

ドイツの船引き

ドイツでは、ライン川において蒸気船が1816年に登場するまで、船が川を遡る際に「船引き道」を用いて引かれていました。この道は、農民たちによってかつての船引きを支える手段として利用されていました。その後は専業の船引き人が現れ、組合が形成され、船引きに関する規則も制定されました。特に1636年には、イングランド王チャールズ1世による記録が残されており、当時の船引きの様子が詳述されています。

現存するドナウ川沿岸の町ノイブルク・アン・デア・ドナウの小道では、かつての船引き道の痕跡が見受けられ、歴史の名残を感じることができます。

このように、船引きは各国で異なる文化を持ちながらも、川を利用した交通手段として、重要な役割を担ってきました。

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