船曳文士

船曳文士氏：華々しいデビューから転身へ至る波瀾万丈な人生

船曳文士氏は、1986年生まれの元JRA騎手です。日本中央競馬会（JRA）栗東トレーニングセンターに所属し、その後は調教助手、そして現在はTCCセラピーパークの厩舎長として活躍されています。

船曳氏の父は、スポーツ新聞社である大阪スポニチで競馬担当記者を務めていた彦丞氏で、特に名馬ハマノパレードの最期に関する取材で知られています。この環境が、船曳氏の競馬への道を決定づけたと言えるでしょう。

船曳氏は、2002年にJRA競馬学校に入学。しかし、1年間の留年を経て、騎手免許を取得することなく、栗東・加用正厩舎所属の騎手候補生となりました。その後、2006年に競馬学校を卒業、晴れて騎手免許を取得し、加用正厩舎からデビューを果たします。同期には、田中博康氏や的場勇人氏といった著名な騎手も名を連ねていました。

そして迎えたデビュー戦。なんと、JRA史上41人目となる初騎乗初勝利という快挙を成し遂げます。華々しいスタートを切った船曳氏でしたが、翌2007年、レース中の落馬事故によって右橈骨尺骨の骨幹部と左鎖骨を骨折するという大きな怪我を負ってしまいます。この事故は、彼の人生に大きな影を落とすことになります。

この怪我の影響もあり、減量騎手の特典を失った船曳氏は、2009年には騎乗数が前年の3分の1以下にまで減少。その後も思うように騎乗成績を伸ばせず、2010年12月20日、騎手を引退することになります。通算成績は634戦20勝でした。引退時、デビュー戦で勝利を収めた愛馬マストビートゥルーはまだ現役を走っていました。

騎手引退後は、中竹和也厩舎の調教助手として第二の人生を歩み始めます。しかし、2015年には調教助手も退任。その後、競馬界を一旦離れ、児童福祉施設で勤務するなど、様々な経験を積みます。そして、TCCのスタッフに加わり、2019年5月1日にオープンしたTCCセラピーパークの厩舎長に就任。現在に至ります。

船曳氏のキャリアには、数々のエピソードが彩られています。中でも有名なのが、2007年2月24日阪神競馬場で行われた障害競走での出来事です。ノボリハウツーに騎乗した船曳氏はレース中に落馬。なんと、馬は空馬のまま競馬場の外に逃走するという、各メディアで大きく取り上げられる出来事が発生しました。

船曳文士氏の人生は、成功と挫折、そして新たな挑戦の連続です。華々しいデビューから、怪我や成績低迷、そして新たなキャリアへの転身。常に変化を恐れず、新たな道を切り開いていく船曳氏の生き様は、多くの人々に勇気と希望を与え続けています。父譲りの競馬への情熱と、児童福祉施設での経験から培われた人間性、そして現在もなお続く彼の挑戦は、これからも注目に値します。

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