船田一雄

船田 一雄（ふなだ かずお）は、1877年12月7日に生まれ、1950年4月18日に没した日本の実業家です。大正から昭和にかけて、三菱グループの要職を歴任しました。

現在の愛媛県久万高原町にあたる上浮穴郡東明神の出身です。地元である久万高等小学校を卒業後、翌年の1892年（明治24年）に試験を経て愛媛県尋常中学校（現在の愛媛県立松山東高等学校）の2年生に編入しました。中学校の5年生だった1895年（明治28年）には、後に国民的な作家となる夏目漱石が英語教師として同校に赴任しており、船田は漱石から食事などの歓待を受ける機会があったと伝えられています。

1896年（明治29年）、愛媛県尋常中学校を卒業した船田は、第五高等学校文科に進学しました。1899年（明治32年）に第五高等学校を卒業後、東京帝国大学法科大学の独法科に進学します。大学在学中に父を病気で亡くしたこともあり、卒業には7年を要し、1906年（明治39年）に東京帝国大学を卒業しました。

卒業後すぐに、船田は水戸区裁判所の検事代理に着任し、司法の道に入りました。水戸で検事試験に合格し、1908年（明治41年）には東京地方裁判所の検事に任官するなど、順調にキャリアを積んでいきました。

しかし、司法の世界を離れる決断をします。1910年（明治43年）、三菱からの勧誘を受け、三菱合資会社地所部（現在の三菱地所）に入社しました。その後、三菱合資会社の営業部から鉱山部に移籍し、鉱山部が独立して三菱鉱業が設立された後は、総務課長を務めました。さらに昇進を重ね、1924年（大正13年）には三菱鉱業の常務に就任しています。

三菱グループの中枢へと進み、1931年（昭和6年）には三菱合資会社の理事となります。1936年（昭和11年）には三菱商事の会長を務め、そして1943年（昭和18年）には三菱本社（三菱合資会社から改称）の理事長に就任し、グループ全体の経営を統括する立場となりました。

第二次世界大戦終結後の1945年（昭和20年）、連合国軍最高司令官総司令部（GHQ）は、日本経済の民主化を目指し、四大財閥に対して自主的な解散による財閥解体を指示しました。当時の三菱グループの総帥であった岩崎小弥太は、このGHQの指示に対し「政府の命令であれば従う」との姿勢を示しましたが、急な病に倒れてしまいます。岩崎の不在の中、船田は三菱商事会長の田中完三らと協議を行い、政府の意向に沿う形で三菱本社の解散を決定するという重要な役割を担いました。財閥解体後、船田は公職追放の対象となりました。

1950年4月18日に72歳で死去しました。郷里の久万高原町に建てられた船田の墓碑には、親交のあった吉田茂元首相の揮毫が刻まれています。

関連項目
三菱財閥
三菱商事
* 愛媛県立松山東高等学校

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