艀

艀（はしけ）について

艀（はしけ）は、河川や運河、港湾内で重い貨物を運搬するために設計された平底の船舶です。これらの船はエンジンを搭載していないため、自力で航行することはできず、タグボートによって牽引されるか、または推進を受けながら進行します。英語では「バージ」（barge）や「ライター」（lighter）として知られ、特に後者は平底の艀を指します。

歴史背景

艀は陸上の運送手段が馬や荷車に依存していた歴史ある時代において、沖合の貨物船と河岸の間の荷役を担う重要な役割を果たしてきました。その語源を辿ると、英語の「Barge」は1300年ごろに登場し、古フランス語の「barge」や古代ローマ時代のラテン語「barica」が関連しています。古代エジプト語の「bari」からは、「小舟」の意味が引き出されます。

産業革命が訪れると、ヨーロッパやアメリカで艀は安価に大量の物資を輸送する手段として重宝されます。運河の発展により内陸の交通が向上し、工業都市や物資集散地が増加しましたが、後に速さや安価さの点で鉄道と競争し、艀の需要は減少していきます。また、港湾では船舶のコンテナ化が進行し、艀の役割はさらなる圧力を受けることになります。

現代における艀の役割と用途

現在でも艀は、トラックやトレーラーでは運べない重い貨物の輸送において重要な役割を果たしています。特にバルクカーゴ（砂、セメント、石炭、穀物など）や重量物の輸送において、艀の運送単価が極めて安価であるため、多くの場面で採用されています。艀は底が平らなため、浅い川や運河でも航行が可能です。大型の機械やプラント設備なども、分解した状態で陸送される際に河川や海を経由して艀を用いて運ばれることがあります。

また、艀運搬船（LASH）という特別な船舶も存在し、貨物を搭載した艀を多数運ぶことができます。これにより、岸壁が未整備な港や川上流への効率的な輸送が実現されます。さらに、艀は岸壁だけでなく、沖合いでの荷役作業にも従事しており、沖仲仕と呼ばれる作業員が船からの貨物を降ろすことがあります。

技術的側面

艀のサイズは地域によって異なりますが、アメリカの河川で一般的に用いられる艀の大きさは、長さ59.4メートル、幅10.6メートル、積載可能重量は1,500トン程度です。日本の艀は、標準的に長さ20メートル、幅6メートルで、積載重量は50トンから200トンです。満載喫水は2メートル以内であるため、浅瀬でも問題なく運行できます。

艀は通常エンジンを搭載しておらず、方向転換のための舵があるのみですが、特定の条件下では自力航行が可能なエンジン付きの艀も存在しています。

その他の関連情報

アニメーションや漫画の中で、航空機を艀に見立てた表現も見られます。特に宮崎駿監督の『風の谷のナウシカ』では、曳航式の貨物グライダーが「バージ」と呼ばれています。これらの創作物は、艀の文化的影響を物語っていると言えるでしょう。

艀は、過去の栄光とは異なる現代の運送手段ではありますが、依然として重要な役割を果たしています。

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