沖仲仕

沖仲仕とは

沖仲仕（おきなかせ）は、狭義には船から陸への荷揚げや荷下ろしを行う作業者を指し、広義では陸から船への積み込みを含む港湾労働者の旧称です。近年では「沖仲仕」という用語が差別的とされ、「港湾労働者」と表現されることが多くなっています。

歴史的背景

1960年代以前、貨物船は主に在来型が多く、荷揚げや荷下ろしには多くの作業員が必要でした。作業は本船から艀（はん）を経て桟橋に荷物を移動させるもので、港湾荷役事業は元請けのもとに複数の下請けを抱える構造でした。特に体力のない下請けは雇用の維持が難しく、手配師と呼ばれるコーディネーターに人材を依頼するケースが一般的でした。このように、労働環境は厳しく、現場は予期せぬ乱暴や犯罪の温床ともなり得ました。

例えば、1915年頃の神戸港では、沖仲仕の人夫供給業から山口組が設立され、アメリカ合衆国においてもマフィアやギャングがこの職業を支配していたことが知られています。

時代の変化

1970年代以降、港湾の整備が進み、海上コンテナを用いたインターモーダル輸送が普及することで、艀を使用する労働集約型の作業は急速に減少しました。その結果、沖仲仕はより広範な港湾労働者としての位置づけへと変化し、大型機械の操作が主な業務となりました。現代では、ガントリークレーンなどの機械を使用したオペレーター的な作業が主体となり、かつての沖仲仕が果たしていた役割とは大きく異なっています。

日本における沖仲仕

日本でも沖仲仕は伝統的に日雇い労働者が多い職業でした。火野葦平の自伝的小説『青春の岐路』では、昭和初期の沖仲仕の生活が描かれており、請負師や仲仕が酒や賭け事に耽り、社会的に評価されない存在であったとされています。

また、著名な作家の生島治郎も沖仲仕として働いた経験があり、当時の日給や雇用形態について言及しています。彼は、手配師が中抜きをする慣習や、プー太郎と呼ばれる横浜の労働者たちの状況を詳細に語っています。このような歴史的背景があり、現在の港湾労働法では、事業者が日雇い労働者を直接雇うことが原則として禁じられています。

港湾労働の著名な人物

沖仲仕の経験をもつ著名な人物としては、フリーアナウンサーの生島ヒロシや、初代若乃花幹士などが挙げられます。生島は渡米費用を稼ぐために港湾労働に従事し、横須賀市での実体験が彼の人生に大きな影響を与えました。

このように、沖仲仕という職業は単なる荷役作業を超え、社会のさまざまな側面や歴史を反映する独自の文化を形成しています。現代の港湾労働者は、効率的に輸送を行うための重要な役割を果たしており、今後もその進化が期待されます。

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