芭蕉の辻

芭蕉の辻（ばしょうのつじ）

芭蕉の辻は、江戸時代の仙台城下町における重要な交差点であり、現在の仙台市青葉区一番町と大町の境界に位置しています。この場所は、城の大手門から延びる大町通と奥州街道の交差する点であり、町割の基点ともなっていました。現在、宮城県の道路元標がここに設置されており、地域の重要な地点であることが示されています。

歴史的背景

仙台城の城下町は、大手門から伸びる大手筋（現大町通）とこれに直交する奥州街道を基にして町割が行われました。両者の交差点が芭蕉の辻であり、周囲の大町や国分町は繁華な商業地域として栄えていました。江戸時代後期の史料『仙府年中往来』によれば、この辻を中心に歳の市が開催され、賑やかな雰囲気が広がっていました。

当初は制札が掲げられていたため、この場所は「札の辻」とも呼ばれていました。仙台藩の地誌『仙台鹿の子』からは、キリシタンや捨馬に関する制札が掲げられていたことが確認されています。また、重罪人に対する刑罰の場としても利用されていました。特に、鋸挽きや立晒しの刑が行われていたことが記録に残っています。

四隅には城郭風の高楼を持つ建物があり、これらの建物は18世紀末から19世紀初頭にかけて成立したと考えられています。寺西元永の『陸奥日記』には、もし楼閣風建築物を自力で建設できない場合、仙台藩から援助を受けることがあったとの記録が残っています。1827年には、火災からの再建のために材料が住人に提供されたという記録も存在しています。これらの建物は、明治時代にも存在していましたが、その後の火災や戦災で次々と失われていきました。

近代の変遷

近代以降、芭蕉の辻周辺は銀行が集まる金融街へと変貌を遂げました。七十七銀行の本店は1903年から1929年にかけて北東角に、1929年から1958年まで南西角に位置していました。また、日本銀行の仙台支店は1941年に北東角に開設されました。また、1928年には仙台市電の芭蕉の辻線が開通しましたが、戦中に撤去されてしまいました。今日でも金融街としての一面を持ちながら、商業的な中心地からは外れています。

名称の由来

芭蕉の辻という名称にはいくつかの説があります。一つは、伊達政宗の間諜として活動していた芭蕉という名の虚無僧が住んでいたというものです。もう一つは、この地に芭蕉の樹が植えられていたという説です。虚無僧の説が有力とされていますが、松尾芭蕉には直接的な関連性はありません。

碑と現在の状況

1935年には、伊達政宗の没後300年を記念して「芭蕉の辻」の碑が建立されました。この碑は1945年の仙台空襲で行方不明となりましたが、1970年に北西角に再び新設されました。現在の芭蕉の辻は、歴史的な価値を持つ場所でありながらも、その商業的な役割は過去のものとなっています。地域の金融機関と共に、かつての賑わいを思い起こさせる場所となっているのです。

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