鋸挽き

鋸挽き（のこぎりびき）について

鋸挽きは、歴史的に行われた死刑方法の一つで、罪人の体を鋸で挽く非常に残酷な刑罰として知られています。この刑罰は、古代から中世、日本のみならず、ヨーロッパや中国でも行われました。日本では特に平安時代から江戸時代にかけて多くの事例が残っています。

日本における鋸挽きの歴史

日本において鋸挽きの刑は、天暦年間（947年-957年）に伝説的な事件が起きたことが知られています。この頃、丹後の領主であった厨子王丸が、敵対する山椒大夫を捕らえ、竹鋸でその首を斬ったという逸話があります。この刑は復讐の側面も強く、罪人は拘束され、ゆっくりと死に至るように設計されたものでした。

江戸時代になると、鋸挽きの実践は次第に形式化され、単なる見せしめとしての性格を持つようになります。実際に首を鋸で挽かれることは少なくなり、罪人の首を晒すのみとなりました。『御定書百箇条』には、罪人は晒し台に首だけを出して置かれ、肩に傷を付けられ、その血を付けた鋸が立てかけられる様子が記されています。このように、形式的には鋸挽きが存在していたものの、実際の死刑は磔刑に取って代わられることになります。

特に、江戸時代には6種類の死刑の中でも最も重い刑罰とされ、主人を殺した者には特に厳罰が科せられました。この刑罰は1869年（明治2年）に法律により廃止されるまで続きました。

鋸挽きの事例

歴史上、鋸挽きで処刑された著名な人物は多く存在します。例えば、1062年に前九年の役で敗れた藤原経清は、刃こぼれした太刀で鋸挽きにされるという厳しい運命を辿りました。また、和田新五郎は1544年に将軍家の侍女との不義密通により処刑され、菅沼定直や杉谷善住坊、大賀弥四郎など、武士や家臣たちもこの運命を免れませんでした。

更に、豊臣秀吉に仕える女房の両親も文禄2年に連座で処刑されるなど、この刑罰は時代や身分を問わず、多くの人々に影響を及ぼしたことがうかがえます。

紀元前の鋸挽き

鋸挽きの起源として、旧約聖書に登場する預言者イザヤがこの方法で処刑されたとされており、これは歴史的な意義を持っています。彼の殉教は、後世に多くの美術作品として描かれることとなりました。

鋸挽きを題材にした作品

鋸挽きを題材にした作品としては、東映映画『徳川女刑罰絵巻 牛裂きの刑』（1976）があります。この映画は、歴史的背景を持ちながらもフィクション的な要素を交えた作品であり、見張り役や酔っ払いによる誤った行動が描かれています。このような作品は、鋸挽きの持つ残酷さを視覚的に表現することで、多くの視聴者に強い印象を残しました。また、同作の主演である川谷拓三は、戦国時代の鋸挽きを受ける役柄も演じています。

このように、鋸挽きは日本の歴史の中で重要な側面を担い、文化や芸術にも影響を与えた刑罰でした。

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