芽球

芽球（がきゅう）：幼若な血液細胞と臨床的意義

芽球（英語: blast）とは、血液細胞の中でも最も未熟な段階にある細胞を指す言葉です。これは形態的な分類に基づいており、造血幹細胞から分化の方向がまだ明確に判別できないほど若い細胞を包括的に指します。具体的には骨髄芽球（Myeloblast）を含め、リンパ芽球や単芽球、巨核芽球などがこれに該当しますが、顕微鏡での形態観察だけではこれらの種類を正確に区別することは難しいとされています。

健康な体での存在

健康な人の場合、芽球は通常、血液が作られる場所である骨髄にのみ存在し、全身を巡る末梢血で観察されることはありません。骨髄内の有核細胞（核を持つ細胞）全体に対しても、芽球の割合は数パーセント以下とごくわずかです。

芽球に分類されない細胞

血液細胞の成熟過程において、ある程度分化が進み、将来どのような細胞になるかが形態的に判断できるようになると、それらの細胞は通常「芽球」とは呼ばれなくなります。例えば、顆粒球の前段階である前骨髄球や、赤血球になる途中の赤芽球は、「芽球」という言葉が含まれていますが、これらは分化の方向性が形態的に確認できるため、一般的に臨床現場でいう「芽球」の概念には含まれません。

臨床的な重要性：白血病との関連

芽球が臨床的に特に注目されるのは、本来存在しないはずの末梢血に現れたり、骨髄での割合が異常に増加したりする場合です。このような芽球の異常な出現は、通常、白血病のような血液のがんを示唆する兆候となります。癌の骨転移など、他の原因で幼若な細胞が末梢血に見られることもありますが、ほとんどの場合は白血病と関連しています。

このため、異常な増加や出現が確認された芽球は、臨床現場では「白血病細胞」である可能性が極めて高いと考えられており、「芽球」という言葉が実質的に「白血病細胞」とほぼ同義で用いられることが少なくありません。世界保健機関（WHO）の分類では、骨髄中の芽球の割合が20%以上に増加した状態が、急性白血病と診断される主要な基準の一つとなっています。急性白血病の病態は、このような幼若な血液細胞（白血病細胞）が異常に増殖し、正常な血液細胞の産生を妨げることによって起こります。

特殊な場合の芽球の定義

ただし、特定のタイプの急性骨髄性白血病（AML）を診断する際には、通常は芽球に含めない細胞を臨床的に芽球として扱うことがあります。例えば、急性骨髄単球性白血病や急性単球性白血病が疑われる場合には前単球を、急性前骨髄球性白血病では前骨髄球を、急性赤芽球性白血病（赤白血病）では赤芽球を、それぞれ白血病細胞として芽球に含めて診断基準を適用することがあります。これは、これらの病気で異常に増加する細胞が、形態的には芽球と区別される段階であっても、その異常な増殖が白血病の本質的な病態であるためです。

このように、芽球は形態的な定義だけでなく、臨床的な状況において白血病との関連が非常に深い、重要な細胞概念です。

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