苅田港駅

苅田港駅：歴史と変遷をたどる貨物駅の物語

かつて福岡県京都郡苅田町に存在した苅田港駅は、日本貨物鉄道（JR貨物）日豊本線貨物支線、通称苅田港線に位置する駅でした。1944年の開業以来、長きにわたり地域経済を支え、多くの貨物列車が行き交いましたが、時代の流れとともにその役割を終え、2016年に廃駅となりました。本稿では、苅田港駅の開業から廃線に至るまでの歴史、貨物輸送の変遷、そして周辺地域との関わりについて詳細に解説します。

開業から貨物輸送の盛衰まで

苅田港駅は、1944年9月1日に「苅田港駅」として開業しました。その後、1945年5月に一時廃止、1949年6月に再開業するなど、その歴史は幾多の変遷を辿っています。1959年には駅名を現在の「苅田港駅」に改称。1987年の国鉄分割民営化を経て、JR貨物の駅となりました。

初期の苅田港駅は、コンテナホーム1面と荷役線1本、そして複数の側線から構成されていました。駅の北側には日立金属九州工場への専用線が伸びており、コンテナ輸送も盛んに行われていました。1980年代までは、北側に広大なヤードと多数の営業仕分け線を有する小規模な操車場が存在し、九州電力苅田発電所、麻生セメント苅田工場、UBE苅田セメント工場、太平洋セメント苅田サービスステーションなど、複数の企業への専用線が接続されていました。また、苅田港の石炭埠頭への桟橋線や公共臨港線も分岐しており、地域の物流拠点として重要な役割を果たしていました。

しかし、1989年には日本セメント向けのセメント輸送がトラック輸送に切り替わったことで、一時的に貨物取扱が停止する事態となりました。その後、1990年に浜小倉駅の貨物業務の一部を移管し、コンテナ取扱を再開。浜小倉駅-苅田港駅間を結ぶ貨物列車が運行を開始しましたが、2002年の北九州貨物ターミナル駅の開業により、その機能は徐々に集約されていきました。

2005年1月末には貨物列車の運行が終了。事実上の営業休止となり、2012年には構内でのコンテナ取扱も中止されました。そして、2016年10月1日、苅田港線の廃線に伴い、苅田港駅はついに廃駅となりました。線路はすべて撤去され、かつての賑わいは完全に消え去りました。

珍しい運行形態と地元との関わり

苅田港線は、珍しい連査閉塞装置を採用していました。また、小波瀬西工大前駅での機回し作業が不可能だったため、小倉駅方面行きの列車は、前照灯を備えた車掌車を先頭にして苅田港駅を発車する独特の運行形態をとっていました。

列車運行が終了した後も、踏切の一時停止義務が残っていたことが、地元住民や企業から問題視されました。国道10号上にも踏切が存在したことから、渋滞や事故の危険性が高まっていたのです。こうした状況を受け、JR貨物は2008年に事業休止届けを提出。踏切の撤去工事が行われ、問題は解決しました。

このように、苅田港駅は、その歴史の中で様々な課題や変化を経験してきました。しかし、同時に、地域経済の発展に貢献してきたという事実も忘れてはならないでしょう。廃線後も、その存在は苅田町の歴史に刻まれ続けています。

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