若山勿堂

若山勿堂：江戸後期の儒学者・兵学者

若山勿堂（わかやま ぶつどう）は、享和2年（1802年）に阿波国徳島（現在の徳島県）で生まれ、慶応3年7月16日（1867年8月15日）に66歳で没した江戸時代の儒学者、昌平黌儒官、そして兵学者です。本名は拯（たすく）、通称は壮吉（そうきち）と称しました。

儒学者としての活躍

18歳の時に江戸へ出て、昌平坂学問所の塾頭であった佐藤一斎に師事し、儒学を学びました。その才能は高く評価され、「一斎門下の十哲」の一人に数えられました。天保年間には、佐藤一斎の推薦により美濃国岩村藩（現在の岐阜県恵那市岩村町）の藩主・松平乗喬に招かれ、藩校・知新館の儒員として藩士の子弟を指導しました。

文久3年（1863年）には、幕府に召し出され、昌平黌の儒官に就任しました。この時期には、松岡康毅などの門弟を育てています。昌平黌での講義に加えて、松代藩（現在の長野県長野市松代町）からの要請に応じて講義も行い、佐久間象山が「勿堂記」を著しています。

兵学者としての功績

若山勿堂は、兵学においても重要な足跡を残しています。旗本であり、高名な兵学者であった窪田清音に師事し、甲州流、越後流、長沼流、山鹿流といった様々な流派の兵学を学びました。特に山鹿流兵学者として知られていました。

窪田清音から若山勿堂へと継承された兵学の学統からは、勝海舟、板垣退助、土方久元、佐々木高行、谷干城、清岡道之助、小畑正路など、幕末から明治にかけて活躍した多くの人材が輩出されました。これらの人物は、日本の近代化に大きく貢献しました。

著作と系譜

若山勿堂は、『論語私記』などの著作を残しています。

長男の若山鉱吉は、横須賀造船所でヴェルニーから造船技術を学び、フランスのシェルブール海軍造船学校へ留学してベルタンの指導を受けました。帰国後は少技監を務め、魚雷発射管の製作に優れた才能を発揮しました。また、日本最初の鉄骨建築である秀英社印刷工場を設計し、芝浦製作所の所長も務めました。妻の木末は、後藤象二郎の三女です。

若山勿堂の研究

若山勿堂に関する研究は、石岡久夫の『兵法者の生活』や『山鹿素行兵法学の史的研究』、風間健の『武士道教育総論』、高瀬代次郎の『佐藤一斎と其の門人』、眞壁仁の『徳川後期の学問と政治: 昌平坂学問所儒者と幕末外交変容』、伊藤信の『濃飛文教史: 先哲の業績を主としたる』、平尾道雄の『青年の風雪』、高知市教育会の『土佐の偉人と名勝』、萩原正太郎の『勤王烈士伝』などにみられます。

まとめ

若山勿堂は、江戸時代後期において、儒学と兵学の両面で優れた才能を発揮し、多くの人材育成に貢献しました。その学問的業績と教育者としての功績は、日本の近代化に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

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