苦礬柘榴石

苦礬柘榴石についての詳細

概要

苦礬柘榴石（くばんざくろいし、英名：pyrope）は、ネソケイ酸塩に属する柘榴石群の一種です。その名はギリシャ語の「炎のように燃える赤」に由来しており、実際にろうそくの光の下でその美しい赤色が際立ちます。今回はこの鉱物の特性や歴史、産出地について詳しく解説します。

産出地

歴史的に見ると、かつてチェコのボヘミア地方で産出された苦礬柘榴石は非常に有名でした。この地域で採取されたパイロープは、その質の高さから一大名品とされていましたが、今ではほとんど採れなくなっています。ボヘミアンガラス工芸は、実際にこのボヘミアンガーネットを模倣する形で発展したとも言われています。

他の産地としては、イタリアがあり、ここでは自形結晶の12面体のものが見られます。また、ノルウェーのアルメニンゲンではエクロジャイトに含まれる形で発見されます。日本では主に愛媛県四国中央市土居町のエクロジャイト中から得られることが多く、こちらは鉄礬柘榴石の成分を多く含んでいます。

性質・特徴

組成式は Mg3Al2(SiO4)3 で示され、純粋なものは無色ですが、通常は鉄礬柘榴石成分を含むため、赤色を示します。屈折率は約1.74で、これは含まれる鉄礬柘榴石成分の比率に応じて変動します。また、相対的に高い密度を持ち、高度な地質条件下で生成される特徴があります。

苦礬柘榴石は主に地球のマントルやかんらん岩、玄武岩のような苦鉄質の岩石に高圧条件で変成されるプロセスによって形成されます。特に、鉄礬柘榴石よりもさらに高圧環境での生成が容易とされています。また、キンバリー岩やエクロジャイトの中にも存在し、ダイヤモンド結晶内に内包されることもあります。

この鉱物は熱力学的に常圧下では安定せず、高圧条件下でのみ安定するため、人工合成は非常に難しいです。最適な合成条件は30000気圧、900℃とされており、かなりの設備や技術を要します。

外観としては、苦礬柘榴石は塊状であることが多く、明瞭な結晶として現れることはあまりありません。偏光顕微鏡で観察すると、薄いピンクがかった紫色に見えにくいケースもあります。このため、鉄礬柘榴石との明確な区別は化学分析を通じて行われます。

まとめ

苦礬柘榴石は美しい赤色を持つ鉱物であり、その産出地や性質についての理解は、鉱物学の中で非常に重要な要素です。高圧環境における形成過程や、採掘が困難になっているボヘミア産の歴史などから、多くの魅力が秘められています。今後もこの鉱物の研究が進むことで、新たな発見が期待されます。

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