英国高等領事裁判所

英国高等領事裁判所の概要

1865年、上海の共同租界に設立された英国高等領事裁判所（The British Supreme Court for China and Japan）は、中国、日本、朝鮮で発生した英国市民を対象とした訴訟および領事裁判の上告を扱うための上級裁判所です。この裁判所は、アヘン戦争の後、清と締結した南京条約（1842年）や虎門寨追加条約（1843年）に基づいて治外法権を得た英国の権利を背景に設立されました。1858年の天津条約により、英国の権利はさらに強化され、裁判所の必要性が高まりました。

施設と裁判の実施

当初、法廷は英国駐上海総領事館の敷地内にあり、設立当初は領事裁判用の部屋が使用されましたが、1871年には専用の棟が建設され、以降もその建物は現存しています。裁判所では、殺人事件から離婚訴訟、商事紛争、商標権に関する訴訟に至るまで、さまざまな案件が処理されました。特に注目されるのは、1873年のグンパッハ男爵に関する訴訟（Hart v Gumpach）で、これは最終的に枢密院司法委員会まで上訴されました。他にも有名なケースには、1939年に日本が引渡しを求めた中国人の人身保護事件や、1897年に横浜で発生した急性毒殺事件などがあり、これらの一部は今でもオンラインで閲覧可能です。

裁判官とその任務

1865年から1943年までの78年間に、15人の常勤裁判官が裁判所で勤務しました。最初は「判事」と「判事補」として呼ばれた役職も、時間の経過とともに称号が変更されました。裁判官たちはイングランド、ウェールズ、スコットランド、アイルランドなど、様々な地域から選ばれ、法律の運用を担いました。

歴代の裁判官の中には、初代上席判事エドマンド・ホーンビーや、多くの判事がその後も高等裁判所や横浜領事裁判所で活躍したニコラス・ハンネンなどが含まれています。最高法廷弁護士（Crown Advocates）という役職も設けられ、1883年から6名が任命され、彼らは裁判所での業務を補助しました。

領事裁判権の歴史的変遷

領事裁判権は、英国が条約を締結する中で変化し、例えば日本との権利は日英修好通商条約（1858年）で獲得されましたが、1899年までにはその権限を失いました。日本における最後の事件は、上海高等領事裁判所によって1900年に処理されたものであり、その後日本関連の裁判は横浜領事裁判所で扱われるようになりました。

朝鮮においても1883年から領事裁判権が確立されましたが、1910年の韓国併合によってその権限は日本に移譲されました。これにより、高等領事裁判所は中国に関する訴訟のみを扱うこととなりました。

また、中国内での治外法権撤廃に向けた動きは1920年代に入りましたが、政情不安のため決定には至らず、1941年の太平洋戦争勃発と共にFunctionsが停止され、最終的に1943年1月に英国は治外法権を放棄しました。これにより、英国高等領事裁判所の長い歴史は幕を閉じました。

参考文献

• - 井上清著『条約改正』、岩波書店、1955年
• - 田中正弘著「千島艦事件」、国史大辞典第9巻、吉川弘文館、1988年
• - 佐野真由子著『オールコックの江戸』、中央公論新社、2003年

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