茶すり山古墳

茶すり山古墳：古代但馬の首長墓

茶すり山古墳は、兵庫県朝来市和田山町筒江に位置する古墳時代中期（5世紀前半）に築造された大型の円墳です。その規模は、円墳としては奈良県の富雄丸山古墳に次ぐ近畿地方最大級であり、出土した副葬品の質の高さと量から、2004年に国の史跡、2013年には出土品が国の重要文化財に指定されました。

位置と概要

古墳は、和田山盆地と山東盆地という二つの小盆地の中間に位置する宝珠峠の西側の丘陵先端部を削り造成されています。墳丘からは和田山盆地を一望でき、その立地からも当時の権力者の存在を強く示唆しています。2001年には、北近畿豊岡自動車道の建設に伴い、兵庫県教育委員会による発掘調査が実施され、墳丘の直径は約90メートル、高さは約18メートルと判明しました。二段に築成された墳頂の平坦部は、東西35メートル、南北30メートルを測ります。

古墳の主体部には2つの埋葬施設があり、それぞれ木棺が用いられ、豊富な副葬品が納められていました。しかし、16世紀に古墳上に城砦が築かれた際、葺石や埴輪の多くが失われてしまいました。わずかに残存する葺石は、一般的な古墳とは異なり、地山の角礫を並べたものです。埴輪は円筒埴輪と朝顔形埴輪が墳頂平坦部の周縁や段築平坦面に並べられていましたが、大半は倒壊・落下し、基礎部分のみが残っています。

埋葬施設と副葬品

墳頂には大小2つの埋葬施設があり、大きい方を第一主体部、北側にあるものを第二主体部と呼んでいます。

第一主体部

第一主体部の墓壙は長さ13.6メートル、幅10.1メートルで、内部には長さ8.5メートル、幅1メートルの巨大な組合式木棺が置かれていました。遺体の頭位は東向きで、棺の内部は仕切りによって3つないし4つの区画に分かれており、遺体を安置する主室と東西の副室で構成されていました。棺の内面には赤色塗料が塗られ、主室の床面には礫が敷かれていました。遺体の頭部付近からは水銀朱が検出されています。副葬品としては、銅鏡3面、甲冑2具、竪櫛10点の他、刀剣類、武具類、玉類など多数が出土しています。

特に注目されるのは、3面の銅鏡で、盤龍鏡、対置式神獣鏡、連弧文鏡（内行花文鏡とも）が含まれます。連弧文鏡は魏晋時代の中国鏡であり、他の2面は中国鏡を模した日本製です。甲冑は短甲2領と冑2頭のほか、三尾鉄、肩甲、頸甲、草摺片などが出土し、被葬者が武人であったことを強く示唆しています。また、鉄柄付手斧と素環頭大刀は朝鮮系の遺物であり、当時の国際交流を示す貴重な資料です。

第二主体部

第二主体部の墓壙は長さ7.5メートル、幅3.7メートルで、内部には組合式木棺が置かれていました。第一主体部と同様に、主室、東副室、西副室に分かれ、主室の床部分には礫が敷かれていました。副葬品は、銅鏡1面、鉄刀2口の他、玉類、小型の農工具類が主体です。銅鏡は仿製鏡の獣帯鏡で、遺体の胸のあたりに置かれていました。東副室からは鉄鎌、手鎌、鉄斧などの農工具類が50点以上出土していますが、これらは実用品ではなく小型品です。

茶すり山古墳の意義

茶すり山古墳は、近畿地方最大級の円墳であるとともに、豊富な副葬品の内容から、当時の但馬地域の首長の権力や文化を知る上で非常に重要な遺跡です。特に、第一主体部から出土した甲冑は、畿内でも限られた古墳からしか出土しない貴重品であり、中央政権との関係を示すものと考えられています。一方で、埋葬方法や墳丘の築造技術には在地性が強く、中央の古墳文化とは異なる独自性も示しています。茶すり山古墳は、富雄丸山古墳と並び、近畿地方の古墳文化を理解する上で欠かせない存在と言えるでしょう。

見学情報

史跡茶すり山古墳は公園として整備されており、隣接する茶すり山古墳学習館では、古墳に関する映像やパネル展示を見ることができます。また、朝来市埋蔵文化財センター古代あさご館では、茶すり山古墳の出土品が収蔵・展示されています。

もう一度検索