荀息

荀息の生涯と功績

荀息（じゅん そく、? - 紀元前651年）は、中国の春秋時代において晋の大夫として知られています。本名は原黯で、元々は原という氏を持っていましたが、後に荀姓に改めました。彼は翼城息邑の出身で、その生涯には多くの歴史的な出来事が織り込まれています。

仮道伐虢

荀息は、晋の分家である曲沃の武公の時代に活躍しました。武公が翼の本家を滅ぼすと、原黯は武公のもとで大夫として仕官します。武公が荀の土地を征服した後、原黯はその地に封じられることとなり、新たに荀氏を名乗ることになりました。

その後、武公の死後、息子の献公が政権を握ります。当時、黄河流域の西虢は晋が中原に進出する上で大きな障害となっていました。献公は西虢を滅ぼしたいと考えましたが、同地域には密接な関係を持つ南方の小国、虞が存在していたため、攻撃が難航しました。そこで荀息は名馬や玉璧を虞に送り、彼らの協力を得て西虢討伐の計画を献公に進言しました。

紀元前658年、荀息は里克と共に兵を率いて虞を通過し、西虢へ攻撃を行いました。さらに紀元前655年には再度道を借りて西虢を攻撃し、ついにはこの国を滅ぼすことに成功します。その結果、晋はその帰り道に虞も攻撃し、滅ぼすことができました。このわずか5年間での大業は、荀息の策によるものであり、献公に重用される理由となりました。

驪姫の乱

献公26年（紀元前651年）、献公は妃である驪姫の讒言によって太子申生を殺し、公子重耳と公子夷吾を亡命させるという悲劇的な事件を引き起こしました。驪姫の子、奚斉が新たな太子に選ばれる中、荀息は奚斉の太傅として彼を支える立場に任命されました。後に献公が病に倒れると、荀息は国政を司る相国に就任します。

献公の死後、荀息は未成年の奚斉を即位させようとしましたが、周囲はこれに反対。里克は葬儀の際に奚斉を刺殺し、さらに奚斉の異母弟である卓子を新たに即位させました。荀息はやむなく卓子の擁立に手を貸しますが、同じく里克とその部下たちにより、卓子と驪姫は殺害されてしまいます。誠実な性格の荀息は、この行為を献公の遺志に背くものと感じ、自ら命を絶つ決断を下しました。周囲の人々は、荀息の苦悩と最期を称え、彼の言葉がいかに重要だったかを語り継ぎます。「白玉の傷は磨けば直るが、言葉の傷は取り返しがつかない」という詩経の一節が、荀息の名に結び付けられることとなりました。

荀息の生涯は、春秋時代の混乱した政治情勢の中で、真摯に国を思い行動した男の物語として、多くの人々に記憶されています。彼の生き様は、忠誠や信義の重要性を教えており、後世に大きな影響を与え続けています。

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