荒木幸雄

荒木幸雄：十七歳の特攻隊員

荒木幸雄（あらき ゆきお、1928年3月10日 - 1945年5月27日）は、群馬県桐生市出身の陸軍軍人でした。彼は陸軍特別攻撃隊第72振武隊員として、太平洋戦争末期に17歳という若さで命を落としました。

生い立ちと軍歴

荒木は桐生市で菓子屋を営む家庭に生まれました。太平洋戦争が始まった翌年、海軍飛行予科練習生（予科練）の試験に合格を目指しますが、身体検査で不合格となります。その後、陸軍少年飛行兵に合格し、東京陸軍少年飛行兵学校、大刀洗陸軍飛行学校甘木生徒隊に進みました。

戦局が悪化の一途を辿る中、通常1年かけて学ぶ課程を半年で終えるという状況下でしたが、荒木は地理学、気象学といった学問や飛行訓練において目覚ましい才能を発揮しました。甘木生徒隊の卒業式では陸軍航空総監賞を受賞。その後も、目達原教育隊での初の単独飛行、二度目の航空総監賞受賞など、輝かしい実績を残しました。

平壌の部隊では、九九式襲撃機による跳飛攻撃の訓練を受けました。1945年（昭和20年）には、第72振武隊の伍長に任命され、特攻隊員として出撃の日を待つことになります。

特攻出撃と最期

家族との別れを済ませた後、荒木は各務原から平壌へ、そして南京へと移動しました。済南で待機中に米軍機の急襲を受け、部隊は平壌へ帰還。その後、目達原基地へ進出し、西往寺を宿舎として出撃に備えました。

万世飛行場から出撃した1945年5月27日、第七二振武隊は沖縄本島東方沖で敵艦隊を発見し突入。この攻撃で駆逐艦「ブレイン」を大破炎上させましたが、荒木自身も戦死しました。享年17歳。その勇敢な戦いぶりから、4階級特進で少尉に任官。金鵄勲章と勲六等単光旭日章が授与されました。

遺品と遺書

荒木が父に宛てた遺書には、家族への感謝と祖国への想いが綴られています。また、飛行服の袖に縫い付けられていた隊のシンボルマークなどの遺品は、万世特攻平和祈念館に寄贈され、今も彼の記憶を伝えています。

「最后の便り致します
其後御元気の事と思ひます
幸雄も栄ある任務をおび
本日出発致します。
必ず大戦果を挙げます
桜咲く九段で会う日を待って居ります
どうぞ御身体を大切に
弟達及隣組の皆様にも宜敷く さようなら」

「子犬を抱いた少年兵」

荒木幸雄は、「子犬を抱いた少年兵」の写真でも知られています。出撃前日、飛行機に爆弾を取り付ける作業を見守っていた荒木のもとに、整備隊長が拾ってきた犬が現れ、その姿を朝日新聞の記者が撮影したものです。この写真は、戦時下の少年兵の姿を象徴するものとして、広く知られています。

荒木幸雄の生涯は、戦争の悲劇と平和の尊さを私たちに教えてくれます。彼の遺書や遺品、そして「子犬を抱いた少年兵」の写真を通して、私たちは戦争の愚かさを認識し、平和な世界を築くために努力しなければなりません。

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