振武隊

振武隊：沖縄戦における陸軍特別攻撃隊

振武隊（しんぶたい）は、第二次世界大戦末期の沖縄戦において、陸軍第6航空軍隷下の特別攻撃隊として編成された飛行部隊の総称です。1945年3月26日から沖縄戦に投入され、本土から沖縄へ向かう連合国軍艦船への体当たり攻撃を敢行しました。

概要

各振武隊は固有の番号を持ち、フィリピンの「八紘隊」からの連番とされましたが、いくつかの欠番が存在します。九州の第6航空軍とは別に、第8飛行師団隷下で台湾から出撃し沖縄戦に投入された特攻飛行部隊は誠飛行隊（まことひこうたい）と呼ばれ、振武隊と番号が重複することはありませんでした。

振武隊は、福岡県の大刀洗陸軍飛行場や熊本県の菊池陸軍飛行場、隈之庄陸軍飛行場、佐賀県の目達原陸軍飛行場などの陸軍飛行場を中継し、鹿児島県の知覧陸軍飛行場と万世陸軍飛行場を中心に出撃しました。宮崎県の都城西飛行場・東飛行場や、海軍の鹿屋飛行場からも出撃した例が見られます。

隊員の構成

隊長は主に陸軍士官学校や陸軍航空士官学校を卒業した士候55・56・57期の若手現役将校が務めました。隊員は主に陸軍少年飛行兵出身の現役下士官や航空機乗員養成所出身の召集下士官である10代後半から20代前半の男子、特別操縦見習士官出身の予備役将校で構成されました。

隊員の選出方法は様々で、技量優秀な者が選ばれたり、部隊長が訓示を行い、一人ずつ部屋に呼ばれて意思を確認したり、記名投票で志願を募ったりする方法がありました。

戦果

振武隊は、沖縄戦において以下のような作戦に参加しました。

昭和20年3月20日 - 第22振武隊
昭和20年4月1日 - 3日 - 第20、23、62振武隊
昭和20年4月6日 - 4月11日 - 第一次航空総攻撃：司偵、第1、22、29、30、42、43、44、46、62、68、73、74、75振武隊
4月12日 - 4月15日 - 第二次航空総攻撃：司偵、第1、20、29、62、102、104、103、107振武隊
4月16日 - 4月17日 - 第三次航空総攻撃：第40、75、79、106、108、107振武隊
4月22日 - 4月27日 - 第四次航空総攻撃：第79、80、81、103、105、109振武隊
4月28日 - 4月30日 - 第五次航空総攻撃
5月3日 - 5月9日 - 第六次航空総攻撃：第106、109振武隊
5月11日 - 5月18日 - 第七次航空総攻撃：司偵、第53振武隊
5月24日 - 5月27日 - 第八次航空総攻撃：第21、29、50、52、54、55、56、57、58、60、61、66、70、72、78、49、105、110、133、433、432、431振武隊
5月28日 - 5月29日 - 第九次航空総攻撃：第432、433、431振武隊
6月3日 - 6月7日 - 第十次航空総攻撃：第111、112、113、144、165振武隊
第十一次航空総攻撃

主な隊と構成

以下に、主な振武隊の構成員の一部を紹介します。

司偵振武隊（振武桜特別攻撃隊）：竹中隆雄中尉、吉原重發少尉など
第1特別振武隊：林弘大尉、田中二也大尉など
第18振武隊：小西利雄中尉、楠田信雄大尉など
第19振武隊：四宮徹大尉、井上忠彦大尉など
第20振武隊：長谷川實大尉、山本秋彦大尉など
第22振武隊：藤山二典中尉、伊東信夫大尉など
第24振武隊（振武錦隊）：小澤大蔵中尉、川田清美大尉など
第26振武隊（征夷隊）：久保田邦夫少尉、梅津末雄大尉など
第29振武隊（九段隊）：中村實少尉、染谷勇大尉など
第40振武隊：石倉三郎大尉、岡清治少尉など
第42振武隊：松澤平一大尉、牛島久男大尉など
第43振武隊：浅川又之大尉、清澤守大尉など
第44振武隊：小原幸雄大尉、甲斐玉樹大尉など
第45振武隊：藤井一中尉、小川彰少尉など
第48振武隊（惟神隊）：鈴木誠一大尉、土屋光男少尉など
第51振武隊（悠久隊）：鮫島豊大尉、荒木春雄少尉など
第53振武隊（天誅隊）：近間満男少尉、三島芳郎少尉など
第54振武隊：葛西宏大尉、三島邦夫大尉など
第56振武隊：池田元威少尉、金子範夫大尉など
第57振武隊：伊藤喜得大尉、唐澤鐵次郎大尉など
第58振武隊（髑髏隊）：高柳隆大尉、上田徳大尉など
第62振武隊（白梅隊）：石川一彦大尉、杉田繁敏中尉など
第64振武隊（国華隊）：渋谷健一大尉、稲垣忠男少尉など
第66振武隊：毛利理大尉、荒川英徳大尉など
第68振武隊：山田勇大尉、片山悦次大尉など
第70振武隊（葉隠隊）：佐久田潤大尉、水川豊少尉など
第73振武隊：高田鉦三大尉、小澤三木大尉など
第74振武隊：伊東實中佐、渡辺信少尉など
第75振武隊：大岩覚少佐、宗像芳郎少尉など
第76振武隊：岡村博二少佐、境忠少尉など
第77振武隊：須山佳市大尉、長谷川榮七少尉など
第79振武隊：山田信義大尉、郷田志郎大尉など
第80振武隊：杉戸勝平大尉、川瀬明大尉など
第81振武隊：片岡喜作少佐、牛渡俊治大尉など
第102振武隊：天野重明大尉、安部静彦大尉など
第103振武隊：石切山文一大尉、板倉震大尉など
第104振武隊：小佐野隆広少尉、長嶺弥三郎少尉など
第105振武隊：林義則大尉、中川昌俊大尉など
第106振武隊：清原勉大尉、安田義男大尉など
第107振武隊：大内清少佐、粟津重信大尉など
第108振武隊：真鍋照雄大尉、小川齊大尉など
第109振武隊：菊池繁三郎大尉、大石安一少尉など
第110振武隊：田中隼人大尉、水崎正直少尉など
第111振武隊：鈴木泰治大尉、掛井義則大尉など
第112振武隊：西崎重男大尉、高村統一郎大尉など
第113振武隊：高野正治大尉、生駒寛彦大尉など
第141振武隊：長井良夫大尉、平原太郎大尉など
第144振武隊：中島秀彦大尉、岡田義人大尉など
第159振武隊：高島俊三少尉、松原新大尉など
第160振武隊：豊嶋光顕少尉、新井利郎大尉など
第165振武隊：中川勝大尉、杉本明大尉など
第179振武隊：金丸亨少佐、江副保郎大尉など
第180振武隊：木下武彦大尉、村木伊三男曹長など
第213振武隊：小林信昭少尉、蘆田慎一少尉など
第214振武隊：橋正豊次少尉、佐々木暹少尉など
第215振武隊：麻生隆大尉
第431振武隊：紺野孝少尉、鮏川林三少尉など
第432振武隊：矢内廉造少尉、増渕松男少尉など
第433振武隊：三瀬七郎大尉、上島博治大尉など

使用機体

振武隊で使用された主な機体は以下の通りです。

一式戦闘機「隼」
二式複座戦闘機「屠龍」
九九式軍偵察機
百式司令部偵察機

関連施設

振武隊に関する資料を展示している施設として、以下のものがあります。

知覧特攻平和会館
万世特攻平和祈念館
太刀洗平和記念館
都城歴史資料館

関連作品

振武隊を題材とした映画やドキュメンタリー作品も制作されています。

映画：『俺は、君のためにこそ死ににいく』、『月光の夏』など
ドキュメンタリー：『NHKスペシャル 学徒兵 許されざる帰還 ~陸軍特攻隊の悲劇~』など

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