荒武タミ

荒武タミの生涯と音楽

荒武タミ（あらたけ たみ）は、1911年2月20日に鹿児島県に生まれ、1992年に逝去した日本の著名な三味線奏者およびゴッタン奏者です。南九州地方で親しまれているゴッタンとは、箱三味線の一種であり、全てに杉材が使用されることが特徴です。この楽器は、従来の三味線に比べて異なる響きを持っており、地域の伝統的な音楽文化を彩ってきました。

ゴッタンは、歴史的に薩摩藩による一向宗禁制の影響を受け、隠れ念仏唄の伴奏楽器として農村部で広まっていましたが、第二次世界大戦後にはその存在が薄れかけていました。しかし、1977年に荒武タミの演奏によってゴッタンが再発見され、音楽界に衝撃を与えることになります。彼女の奏法は撥を使わずに指で弾くスラップ奏法で、曲ごとに異なる技術を駆使します。

幼少期と音楽との出会い

タミは、福山村比曽木野（現在の霧島市）で、前田盛祐とその妻クサの四女として誕生しました。彼女には二人の姉と一人の兄、そして妹がいました。5歳で麻疹にかかり、視力を大きく損なうことになるが、母親は彼女の未来を憂い、音楽の道を進むように促します。国内の多くの農村では、女子が小学校卒業後に三味線を習う文化がありましたが、タミは高価な三味線の代わりにゴッタンを選び、14歳から本格的に学び始めます。

16歳の時、母親を亡くしたタミは、しばらくは子守りをしながらも、次第に三味線奏者へと進む決意を固めました。彼女の才能はすぐに評判となり、数多くの弟子を持つようになりました。その後、著名な民俗学者たちに見出され、1977年には国立劇場での演奏を果たします。

音楽活動と影響

荒武タミは、1978年にリリースされたレコード『ゴッタン〜謎の楽器をたずねて〜』で一躍注目を集めました。このアルバムには、彼女がゴッタンを伴奏しながら民謡や語り物を演奏した音源のほか、彼女自身が人生を語るインタビューが含まれており、音楽のドキュメンタリー性を強調しています。著名な民俗学者、小泉文夫は、そのライナーノートでタミの演奏を高く評価し、日本歴史における盲目の音楽家の重要性に言及しています。

受賞と功績

タミの音楽は日本の伝統音楽の中で特に高く評価されており、1977年には南日本文化賞を、1988年には文部大臣賞および鹿児島県民表彰を受賞しました。彼女の演奏は、現代においても多くの人々に親しまれ続けており、その功績は後の世代に引き継がれています。

まとめ

荒武タミの存在は、日本の音楽文化における重要な一ページです。彼女が残したゴッタンという楽器と、その伝統は、今後も多くの人々に受け継がれ、愛されていくことでしょう。

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