荻野周史

荻野周史について

荻野周史（おぎの しゅうじ、Shuji Ogino、1968年 - ）は、兵庫県明石市出身の分子病理疫学者、病理学医師であり、分子遺伝病理学の専門家です。現在、ダナ・ファーバー癌研究所、ブリガム・アンド・ウィメンズ病院、ハーバード大学医学大学院で病理学教授、ハーバード大学公衆衛生大学院で疫学部教授を務めています。また、ブリガム・アンド・ウィメンズ病院の分子病理疫学部門長、マサチューセッツ工科大学とハーバード大学のブロード研究所のアソシエイトメンバーでもあります。

分子病理疫学の先駆者

荻野は、従来の疫学と病理学に、分子生物学と生物統計学的手法を統合した分子病理疫学（MPE）分野の提唱者であり、先駆者として国際的に知られています。2013年からは国際分子病理疫学会議を主宰し、座長を務めており、その会議は2014年と2016年にボストンで開催されました。

病理学医師としての活動

2003年には、日本人として初めて米国分子遺伝病理学超専門医の資格を取得し、大腸癌の分子検査をはじめとする様々な分子病理学的検査の専門家として活躍しています。また、American Joint Committee on Cancer（AJCC）の下部消化管パネルのアドバイザーや、National Comprehensive Cancer Networkのタスクフォースメンバーも務めています。

分子病理疫学者としての貢献

2007年以降、荻野は一般人や癌患者集団におけるリスク要因（環境、食生活、ライフスタイル、遺伝的要因など）と、大腸癌におけるKRAS変異、BRAF変異、PIK3CA変異などの分子病理学的指標との関連性を研究し、多くの論文を発表してきました。2010年には、分子病理学と疫学を統合した独立した分野として「分子病理疫学」という概念を提唱しました。この概念は、American Association for Cancer Research（AACR）などの国際学会でもテーマとして取り上げられるようになり、その重要性が広く認識されています。

大腸癌研究における新たな視点

荻野は、分子病理疫学から派生した概念として、大腸の連続性モデルを提唱しました。従来の大腸癌の分子病理学的指標の捉え方として、口側と肛門側の2相に区分する考え方が主流でしたが、荻野は1,400人以上の大腸癌患者のデータベース解析から、マイクロサテライト不安定性（MSI）、CpG island methylator phenotype（CIMP）、BRAF変異の頻度が、大腸の部位によって連続的に変化することを証明しました。その他にも、"the GWAS-MPE approach"、"the unique tumor principle"、"the unique disease principle"、"the etiologic field effect model"、"the integrative lifecourse epidemiology - MPE model"、"the pharmaco-MPE model"、"the immuno-MPE model"など、分子病理疫学から派生した様々な概念を提唱しています。

研究業績

2017年12月現在、荻野の累計引用数は26,200を超え、h-indexは87に達しています。分子病理疫学の概念や関連パラダイムを展開した原著論文を多数発表し、この分野の発展に大きく貢献しています。

略歴

1981年 - 1987年: 灘中学校・高等学校
1987年 - 1993年: 東京大学理科三類、東京大学医学部医学科
1994年 - 1995年: 在沖縄米国海軍病院にて研修
1995年 - 1997年: ドレクセル大学アレゲニー総合病院にて病理学科研修医
1997年 - 1999年: ケースウェスタンリザーブ大学にて病理学科研修医
1999年 - 2001年: ペンシルバニア大学にて分子病理学のクリニカルフェロー、ポスドク研究員
2001年: 東京大学大学院医学系研究科博士課程修了
2001年: 米国解剖病理学、臨床病理学専門医ボード資格取得
2001年 - 2004年: ハーバード大学医学大学院、ダナ・ファーバー癌研究所病院、ブリガム＆ウィメンズ病院の病理学インストラクター
2003年: 米国分子遺伝病理学超専門医ボード資格取得（日本人初）
2004年 - 2008年: ハーバード大学医学大学院、ダナ・ファーバー癌研究所病院、ブリガム＆ウィメンズ病院の病理学助教授
2008年 - 2015年: 同准教授
2010年: ハーバード大学公衆衛生大学院にて修士課程修了（疫学）
2012年 - 2015年: ハーバード大学公衆衛生大学院准教授を兼任
2013年 - 現在: 国際分子病理疫学会議の座長
2014年 - 現在: J Dis Markers, Annal Clin Cyto Patholなどの学術誌で分子病理疫学セクションの編集者
2015年 - 現在: ハーバード大学医学大学院、ダナ・ファーバー癌研究所病院、ブリガム＆ウィメンズ病院の病理学教授、ハーバード大学公衆衛生大学院疫学教授
2016年 - 現在: ブリガム＆ウィメンズ病院病理部分子病理疫学部門長
2017年 - 現在: マサチューセッツ工科大学とハーバードのブロード研究所アソシエイトメンバー

受賞・栄誉歴

2004年: 分子病理学会エグゼクティブ・オフィサー賞
2011年: 米国およびカナダ病理学アカデミー・ラムズィ・コトラン・ヤング研究者賞
2012年: 分子病理学会メリトリウス・サービス賞
2014年: トムソン・ロイター社の“The Most Influential Scientific Minds:2014”の一人に選出
2014年: 米国臨床研究学会 (ASCI) 会員に選出
2014年 - 現在: FASEBの栄誉科学賞の選考委員
2015年 - 現在: NCI R35 Outstanding Investigator Award
2015年: トムソン・ロイター社の"Highly Cited Researchers 2015"に選出
2016年、2017年: クラリベートアナリティックス社の"Highly Cited Researchers"に選出
2018年: 米国研究病理学会（ASIP）Outstanding Investigator Award

人物像

荻野は、ドレクセル大学アレゲニー総合病院での研修中に、同病院の脳神経外科教授であった福島孝徳から多大な影響を受けました。また、エルゴノミクスキーボードを製造するKinesisの製品を愛用し、キー配列はQWERTY配列ではなく、人間工学的に改良されたDvorak配列を独自に改良した"modified Dvorak"を使用しています。趣味は将棋、テニス、自転車、散歩、クラシック音楽鑑賞で、特に数多くの作曲家について深い知識を持っています。

関連項目

分子病理疫学 (MPE)
ハーバード大学に関係する日本人
東京大学の人物一覧
灘中学校・高等学校の人物一覧
兵庫県出身の人物一覧

外部リンク

Dr. Ogino Lab - Molecular Pathological Epidemiology (MPE) Lab - Dana-Farber Cancer Institute - Home （英語）
ハーバード大学教授　荻野周史のブログ
Shuji Ogino, MD, PhD, MS (Epidemiology) - DF/HCC
Shuji Ogino, MD, PhD, MS - Dana-Farber Cancer Institute | Boston, MA
Shuji Ogino（英語） | Harvard T.H. Chan School of Public Health
Shuji Ogino, MD, PhD, MS（英語） - Department of Pathology
Faculty | Harvard University
Searches | Harvard University

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